問 題
53歳男性。2型糖尿病、高血圧症及び高コレステロール血症(非家族性)のため、生活習慣の改善に加え以下の処方による治療を行っている。しかし、LDL-Cの改善が認められたものの、そのコントロールが不十分なので処方の追加について医師から薬剤師に相談があった。
家族歴:父親が50歳で心筋梗塞
検査値:血圧 131/79mmHg、血清クレアチニン値 1.1mg/dL、HbA1c 6.7%(NGSP値)、LDL-C 179mg/dL、HDL-C 42mg/dL、TG(トリグリセリド) 120mg/dL、CK(クレアチンキナーゼ) 57U/L、AST 53IU/L、ALT 41IU/L
問262
医師へ提案する薬物として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- エゼチミブ
- イコサペント酸エチル
- エボロクマブ
- シンバスタチン
- ベザフィブラート
問263
提案した薬物それぞれの作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 転写因子sterol-responsive element binding protein (SREBP)-2の活性化を介して、LDL(低密度リポタンパク質)受容体の合成を促進する。
- コレステロールトランスポーター(NPC1L1)を阻害することで小腸における食物由来のコレステロール吸収を抑制する。
- SREBP-1cを抑制し、肝臓でのTG合成を抑制する。
- リソソームにおけるLDL受容体の分解を抑制し、LDL受容体の細胞膜へのリサイクリングを増加させる。
- ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPARα)を刺激することでTGの加水分解を促進させる。
正解.
問262:1, 3
問263:2, 4
解 説
問262
問 263 と合わせて解説します。
問263
問 262 について
選択肢 1 は妥当な記述です。
エゼチミブ(ゼチーア)は、小腸コレステロールトランスポーター阻害薬です。小腸壁細胞に存在するタンパク質(NPC1L1=Niemann-Pick C1 like 1)を阻害することにより、コレステロールの吸収を選択的に阻害する薬です。
選択肢 2 ですが
イコサペント酸エチル(エパデール)は、中性脂肪を減らす働きが期待される脂質異常症治療薬です。コレステロールのコントロール不十分に用いるのは不適切と考えられます。
選択肢 3 は妥当な記述です。
エボロクマブ(レパーサ)は、ヒト抗 PCSK9 モノクローナル抗体製剤です。LDL 受容体分解促進タンパク質である PCSK9 に高い親和性を示し、PCSK9 の LDL 受容体への結合を阻害します。この結果、LDL 受容体の分解を抑制します。
選択肢 4 ですが
シンバスタチンは、既に処方されているロスバスタチンと同じくスタチンです。作用機序が重複するため、不適切と考えられます。
選択肢 5 ですが
ベザフィブラートは、フィブラート系です。核内受容体である PPARα に結合することにより、肝臓での中性脂肪合成を抑制すると共に、リポタンパク質リパーゼを活性化させることで、血中の中性脂肪値を低下させます。コレステロールのコントロール不十分に用いるのは不適切と考えられます。
以上より
問 262 の正解は 1,3 です。
問 263 の正解は 2,4 です。
コメント