問 題
65歳女性。体重50kg。数日前より左腰背部痛、悪寒を訴え、近医を受診した。精査の結果、腎結石と診断され、入院し経尿道的腎尿管結石砕石術(fTUL)が施行された。
術後、翌朝に収縮期血圧約70mmHgへの低下を認めた。敗血症性ショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断され、ICUへ転棟した。ICU入室後、ドパミン、ノルアドレナリン、バソプレシンが持続微量点滴にて投与され循環動態は安定、尿量も保たれた。
抗菌薬はドリペネムとし、DICに対する以下の処方案について医師がICU担当の薬剤師に意見を求めた。
問220
医師に対する、ICU担当の薬剤師の回答として適切なのはどれか。2つ選べ。
- 出血所見がない場合、使用できない。
- 過量投与による副作用発現に備えて中和剤を準備しておく。
- 腎機能低下を考慮して、適宜減量して使用する。
- ヒト血液由来の特定生物由来製品であるため、患者家族に感染リスクを説明する。
- 点滴静注は約30分かけて行う。
問221
医師より、患者に用いるトロンボモデュリンアルファ(遺伝子組換え)について、天然のトロンボモデュリンとの違いを知りたいとの問合せがあった。文献を探したところ、天然のトロンボモデュリンの模式図を見つけた(下図)。
天然のトロンボモデュリンの領域A~Cのうち、トロンボモデュリンアルファ(遺伝子組換え)に相当する領域として正しいのはどれか。1つ選べ。
- 領域A
- 領域B
- 領域C
- 領域A~B
- 領域B~C
- 領域A~C
正解.
問220:3, 5
問221:1
解 説
問220
問 221 と合わせて解説します。
問221
トロンボモデュリン アルファ(リコモジュリン)は、トロンビン依存的に活性化プロテインCの産生を促進します。
ヒトトロンボモジュリンは、557個のアミノ酸からなる膜貫通型タンパク質です。リコモジュリン(rTM)は、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを除くドメインからなる、遺伝子組み換え製剤です。リコモジュリンの血中半減期は約20時間と長い点が特徴です。1日1回の投与で充分な抗凝固活性を期待できます。
腎機能低下時には、減量して使用します。(102-329)
選択肢 1 ですが
頭蓋内出血などが見られる場合、出血を助長するため使用してはいけない薬剤です。「出血所見がない場合使用できない」という記述は明らかに誤りと考えられます。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
トロンボモデュリンの中和剤は、試験時点では知られていません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当な記述です。
選択肢 4 ですが
ヒト血液由来ではありません。よって、選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当な記述です。
以上より
問 220 の正解は 3,5 です。
問 221 ですが
細胞内領域 C, 及び 膜貫通領域 B を除く部分なので、A のみです。
正解は 1 です。
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