問 題
55歳男性。10年前に2型糖尿病と診断され、生活習慣の改善とナテグリニドの服用を開始した。5年前にHbA1c値が8.4%まで上昇したため、メトホルミン塩酸塩が追加され、その後増量されて以下の処方となった。
問266
処方1に対して、特に注意すべき副作用の初期症状はどれか。2つ選べ。
- 尿路感染症による排尿痛
- メラニンの過剰生成による色素沈着
- 心機能低下による下肢の浮腫
- 乳酸アシドーシスによる全身倦怠感、過呼吸
- 低血糖によるめまい、ふらつき
問267
各グラフの実線は、ナテグリニド錠を食直前に服用した際の血漿中濃度推移を表す。本剤を食直後に服用した場合、予想される血漿中濃度推移(破線)を表す最も適切なグラフはどれか。1つ選べ。
問268
この患者は、処方1による治療を行っていたが、血糖コントロール不良状態が3ヶ月続いたため、以下のインスリン製剤を追加することになった。
この患者に対する服薬指導に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。
- インスリン デテミルが追加になりましたので、これまで処方されていたナテグリニドの服用は中止になります。
- 膵臓のインスリン分泌能がなくなってしまったため、インスリン製剤が必要となりました。
- なるべく同じ部位で、少しずつずらした場所に注射してください。
- 体重増加しやすくなりますので、食事・運動療法をしっかり行いましょう。
- インスリン デテミルは基礎インスリンを補充するものなので、低血糖に注意する必要はありません。
問269
インスリン デテミルに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 速効型のインスリン製剤である。
- 皮下注射後、等電点沈殿に伴い微結晶になり、ゆっくりと溶解して血中に移行する。
- ヒトインスリンにミリスチン酸基を付加し、血漿中のアルブミンとの結合を利用して作用の持続化を図っている。
- 投与ごとの血糖降下作用のばらつきが少なく、安定した血糖コントロールが期待できる。
- 等張化剤としてD-グルコースが用いられている。
正解.
問266:4, 5
問267:4
問268:3, 4
問269:3, 4
解 説
問266
メトホルミンは、ビグアニド系薬です。インスリン分泌作用がないことが特徴です。肝臓での糖新生の抑制や糖利用促進及び、AMPキナーゼ(AMPK)の活性亢進などを介して血糖を低下させます。特徴的な副作用として乳酸アシドーシスがあり、初期症状である吐き気、腹痛など注意が必要です。
ナテグリニドは、速効性インスリン分泌促進薬です。これらの薬は SU 構造は持たないのですがSU 受容体に結合して、SU 薬と同様のメカニズムで作用します。さらに、SU 薬に比べ吸収が早く、服用後すぐに血糖値降下が見られるという特徴があります。すぐに効くため、低血糖にならないよう食直前に服用するよう注意が必要です。
以上より、問266 の正解は 4,5 です。
問267
ナテグリニド等のグリニド系薬剤は、食後の服用で作用が減弱することが知られています。作用減弱なので、血中濃度は食直前服用時と比べ、少なくとも増加はしないと考えられます。作用が減弱するのはナテグリニドの吸収が妨げられるためです。緩やかに吸収されれば、Cmax に到達する時刻は「右側」に移動すると考えられます。以上より、問267 の正解は 4 です。
問268
問269 とまとめて解説します。
問269
インスリン デテミルは、持効型のインスリン注射剤です。 「デテミル」が detached threonine + myristic acid から由来しておりインスリンにミリスチン酸基を付与したものです。ミリスチン酸基の役割は2つです。自己会合を促すことと、血中でアルブミンと結合することで吸収及び分布が緩やかになります。24時間 一定量が分泌される基礎分泌の補充目的で用いられます。※食事が不規則といった場合に低血糖により注意が必要である ということに留意が必要です。
以上より、問268 の選択肢 1,2,5 は明らかに誤りです。正解は 3,4 です。
また、問269 の正解は 3,4 です。
コメント