代表的な界面活性剤の種類と性質

界面活性剤とは、界面の性質を変える物質です。構造的特徴として、1つの分子中に親水基と疎水基の両方が存在するという点があげられます。模式図として、よく下図のようなマッチ棒のような絵が用いられます。

界面活性剤は大きく2つに分類されます。1つめは、イオン性界面活性剤です。親水基の部分がイオンになっている界面活性剤です。イオン性界面活性剤はイオンの種類により更に3つに分類されます。すなわち、陰イオン性、陽イオン性、両性です。それぞれ、親水基に、陰イオン、陽イオン、陽イオンと陰イオンの両方を持ちます。

代表的な例として
陰イオン性界面活性剤は、セッケン、ラウリル硫酸ナトリウムです。
陽イオン性界面活性剤は、ベンザルコニウム塩化物です。
両性界面活性剤は、レシチンです。
(この対応は、確実に!まずは、両性が、レシチン をしっかり覚えると思い出しやすいと思います。)

2つめは、非イオン性界面活性剤です。親水基の部分がイオンではありません。代表的な例として、Tween、Span、ラウロマクロゴール、モノステアリン酸グリセリン などがあります。

界面活性剤を水に溶かすと、濃度が低い時は、ほとんどが疎水基を気相にむけて境界に集まります。ある程度の濃度になると、ミセルと呼ばれる、疎水基を内側にむけた球状の会合体を形成します。ミセルを形成し始める界面活性剤の濃度のことを、臨界ミセル濃度(c.m.c:critical micelle concentration)と呼びます。

界面活性剤の性質は、c.m.c を境に大きく変化するという特徴があります。界面活性剤の性質として、洗浄力を持つ、表面張力を下げるといったものがあります。洗浄力は、c.m.c 以上の濃度で急激に増加します。表面張力は、c.m.c までは小さくなっていき、c.m.c 以上では、ほぼ変化しません。

ちなみに、界面活性剤がイオン性界面活性剤である場合、ある程度の量の界面活性剤を入れておいて温度を上げていくとミセル形成がおきて溶解度が急激に大きくなります。この温度をクラフト点とよび、各イオン性界面活性剤に固有の値です。炭素数が多いと、クラフト点は高くなります。

温度を上げていくことで、より分子が運動し、球状に集まりやすくなるためであると考えられます。すなわち低温では、親水基同士は反発しやすいし、疎水基同士は球状ではなく層状にあつまりやすいためなかなかミセル形成がおきない。そもそもそんなに溶媒中に分散しない。 → 高温になると分子の運動が激しくなり球状の形になる確率が高くなると考えられます。

一方、非イオン性界面活性剤は、親水基と溶媒中の水分子間に水素結合が形成され溶解性が高いという特徴があります。このため、クラフト点はありません。非イオン性界面活性剤では、温度をあげるとむしろ溶解度が下がり、溶液がにごります。これは分子の運動が激しくなることで水素結合が切断されるためです。この時の温度は曇点(どんてん)と呼ばれます。各非イオン性界面活性剤に固有の値です。炭素数が多いと、曇点は低くなります。

界面活性剤の、水及び油への親和性の程度を表す尺度が HLB (Hydrophile-Lipophile Balance) 値です。HLB 値が 7 より大きいと親水性です。2 種類の、HLB 値の異なる界面活性剤を混合すると、その HLB 値は加重平均となります。

例えば 、HLB 5 の界面活性剤を 10g、HLB 11 の界面活性剤を 50g 混ぜたとすると(5×10 + 11×50)÷(10 + 50) = 10 となります。

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