造血薬には、大きく2つの分類があります。
1つめは、貧血治療薬です。赤血球の産生を促進します。2つめは、白血球減少症治療薬です。白血球の産生を促進します。
造血薬は作用機序に基づき、7 つに分類されます。
ⅰ.鉄欠乏性貧血治療薬
ⅱ.巨赤芽球性貧血治療薬
ⅲ.葉酸欠乏症貧血治療薬
ⅳ.再生不良性貧血治療薬
ⅴ.再生不良/溶血性貧血治療薬
ⅵ.エリスロポエチン製剤
ⅶ.白血球減少症治療薬
ⅰ.鉄欠乏性貧血治療薬
このタイプの代表的な薬は
・硫酸鉄(フェロ・グラデュメット)
・クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア)
・シデフェロン(フェリコン)
などが挙げられます。
( )の中に書いたのは、商品名の一例です。
硫酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、シデフェロンは、鉄欠乏性貧血治療薬です。不足した鉄を補い、ヘモグロビンの合成を促します。3価鉄(Fe3+)より、2価鉄(Fe2+ 、ヘムに含まれる形になっている鉄イオンを指す)の方が消化管吸収がよいことが知られています。
この薬が出た時は、まず血中の鉄分が補充され、次に貯蔵鉄が補充されます。そのため、症状改善がみられても貯蔵鉄が正常化するまで服用継続するよう指導が必要です。具体的には貧血改善後、4~6ヶ月程鉄剤を継続服用する必要があります。
ⅱ.巨赤芽球性貧血治療薬
このタイプの代表的な薬は
・シアノコバラミン(ビタメジン)
・ヒドロキソコバラミン(コンベルビー)
・メコバラミン(メチコバール)
などが挙げられます。
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メコバラミンは、巨赤芽球性貧血治療薬です。巨赤芽球性貧血とは、ビタミン B12 や葉酸欠乏によりおきる貧血です。
ビタミン B12 は、胃の壁細胞から分泌される内因子と呼ばれる糖タンパク質と結合することで、小腸から吸収されます。この内因子が、何らかの要因により欠乏することにより、ビタミン B12 が吸収されず欠乏することが原因で生じる貧血が、巨赤芽球性貧血です。
巨赤芽球性貧血の治療は、ビタミン B12 の、皮下、筋注です。消化管から吸収できないから直接補充しちゃえというイメージです。
ⅲ.葉酸欠乏症貧血治療薬
このタイプの代表的な薬は
・葉酸(フォリアミン)
などが挙げられます。
葉酸は、葉酸欠乏性貧血治療薬です。メトトレキサートという抗リウマチ薬の副作用として生じる、葉酸欠乏症貧血に対してよく用いられる薬です。
ⅳ.再生不良性貧血治療薬
このタイプの代表的な薬は
・メテノロン(プリモボラン)
・ナンドロロン(デカ・デュラミン)
などが挙げられます。
メテノロン、ナンドロロンは、再生不良性貧血治療薬です。再生不良性貧血は、骨髄機能低下による貧血です。
メテノロン、ナンドロロンは、タンパク質同化ステロイドと呼ばれる物質で造血幹細胞に作用することで、赤血球産生を促進することで貧血を改善させます。
ⅴ.再生不良/溶血性貧血治療薬
このタイプの代表的な薬は
・ステロイド
・免疫抑制剤
などが挙げられます。
ステロイド(糖質コルチコイド)、免疫抑制剤は、再生不良性貧血や溶血性貧血治療薬に用いられます。
再生不良性貧血や、溶血性貧血には、自己抗体産生が関与しています。そのため、免疫反応を抑制するこれらの薬を用いることで貧血症状の改善を図ることができます。
ⅵ.エリスロポエチン製剤
このタイプの代表的な薬は
・エポエチンアルファ(エスポー)
・エポエチンベータ(エポジン)
などが挙げられます。
エポエチンアルファ、エポエチンベータは、エリスロポエチン製剤です。エリスロポエチンとは
腎臓で産生される、赤血球産生を促進させるホルモンです。
腎機能の低下などによるエリスロポエチン産生減少に対して、エリスロポエチンを補充することにより貧血症状の改善を図る薬です。
ⅶ.白血球減少症治療薬
このタイプの代表的な薬は
・フィルグラスチム(グラン)
・レノグラスチム(ノイトロジン)
・ナルトグラスチム(ノイアップ)
・ミリモスチム(ロイコプロール)
などが挙げられます。
フィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム、ミリモスチムは、白血球減少症治療薬です。
フィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチムは、G-CSF(granulocyte colony-stimulating factor)製剤と呼ばれます。この製剤は、主に好中球を増加させます。
ミリモスチムは、M-CSF(Macrophage-colony stimulating factor)製剤と呼ばれます。この製剤は、主に単球マクロファージを増加させます。
代表的な造血薬をまとめると、以下の表になります。
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