NMRスペクトルの概要と測定法

NMRとは

NMRとは、nuclear magnetic resonance の頭文字からとったもので、核磁気共鳴と訳されます。これを利用すると、分子中の炭素や水素の並び方(結合の仕方)がわかるため、分子構造決定に重要な役割を果たします。

このように核磁気共鳴の原理を使って分子の構造を決定する分析方法を、核磁気共鳴分光法(NMR法)といいます。

NMRの原理

質量数が奇数の原子核は、それぞれに固有の磁気双極子モーメントを持っています(質量数が偶数の原子は磁気双極子モーメントが 0 なので、ここでは扱いません)。

たとえば1Hや13C、31Pなどが代表例ですが、これらは普段、それぞれ特有の周波数で運動(回転)しています。

この周波数は1Hなら1Hで一定なのですが、磁場のないところでは個々の原子核がランダムな方向に回転しているため、それを観察していても何も得られるものはありません。

しかし、その原子核と同じ周波数の磁場を外部からかけると、原子核は外部磁場と同じ向きを向いて回転するか、または外部磁場と反対を向いて回転するかのどちらかになります。

同じ向きの状態を低エネルギー状態(αスピン)、逆向きの状態を高エネルギー状態(βスピン)と呼びます。

このαスピンとβスピンのエネルギー差は原子ごとにほぼ一定の値をとるのですが、厳密にいえば、同じ1Hなら1Hでも、原子の並び方によって少しだけエネルギー差の値が変わってきます。

たとえば、酢酸(CH3COOH)なら、頭にあるCH3の3つのHは、その並び方が等価なのでエネルギー差は一緒ですが、COOHのHは、ほかのHとは並び方が違うので、これだけαスピンとβスピンのエネルギー差がほかと異なるということです。

このように、αスピンとβスピンのエネルギー差の微妙な違いを検出することで分子構造を推測していく分析方法が、核磁気共鳴分光法(NMR法)と呼ばれる分析法になります。

また、NMR法はその原子に固有の周波数で測定するため、1Hと13Cとを一緒に測定することはできません。

1Hを用いた測定法を1H-NMR(プロトンNMR)、13Cを用いた測定法を13C-NMR(カーボンNMR)と呼んでいます。

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