問 題
午前8時半頃、半裸で意味不明の言葉を叫びながら路上で暴れていた男性が警察官に保護された。言動から薬物中毒が疑われたため、警察官は救急車を手配し、男性は救急病院に搬送された。
男性の来院時の状態は以下の通りであり、担当医師から、救急救命室担当の薬剤師に、原因薬物の検査と治療薬の提案が依頼された。
【身体所見】
呼吸数:42/分、脈拍:160/分、体温:38℃、瞳孔散大・対光反射減弱、発汗なし、歯咬み・歯ぎしり著明、口唇チアノーゼ、四肢の冷感、呼吸時に「ウー、ウー」と喘ぎながら首を左右に常同的に振る、左上肢に多数の注射痕あり
問234
原因薬物と推定されるのはどれか。1つ選べ。
- 大麻
- ヘロイン
- LSD
- メタンフェタミン
- トリアゾラム
問235
この患者の治療に最も適切な薬物はどれか。1つ選べ。
正解.
問234:4
問235:1
解 説
問234
大麻の摂取法は、パイプなどを用いた経口摂取が主な方法です。多数の注射痕とあることから、大麻ではないと考えるのが妥当です。よって、選択肢 1 は誤りです。
ヘロインは、まず多幸感をもたらし、その後だるさ、激痛といった症状が見られます。又、大量の涙、鼻水、よだれ、冷や汗といった症状が見られます。そのような症状は見受けられないことから、ヘロインではないと考えるのが妥当です。よって、選択肢 2 は誤りです。
LSD は、主に幻覚作用を示す、合成麻薬です。LSD は通常経口摂取されるため、多数の注射痕から考えて、LSD ではないと考えるのが妥当です。よって、選択肢 3 は誤りです。
メタンフェタミンは、覚せい剤です。主に静脈注射で摂取され、血圧上昇、散瞳などが見られます。又、常同行為が見られることが多いという特徴があります。
トリアゾラムは、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。呼吸抑制が副作用として知られています。呼吸数42/分 と、興奮性の作用が見られることから、トリアゾラムではないと考えるのが妥当です。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 4 と考えられます。
問235
選択肢 1 は、ジアゼパムです。
興奮状態の対症療法として用いられることがあります。
選択肢 2 は、アトロピンです。
コリン作動性クリーゼの解毒薬として用いられることがあります。
選択肢 3 はナロキソンです。
麻薬拮抗薬として用いられます。
選択肢 4 は、アセチルシステインです。
アセトアミノフェン中毒の解毒剤として用いられます。
選択肢 5 は、プラリドキシムヨウ化メチルです。
有機リン剤中毒の解毒剤として用いられます。
本症例の患者は、興奮状態であると考えられるため、適切な薬剤は選択肢 1 のジアゼパムと考えられます。以上より、正解は 1 です。
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