薬剤師国家試験 第99回 問314-315 過去問解説

 問 題     

35歳男性。微熱、鼻水、咳の症状を訴えて薬局を訪れ、対応した薬剤師が、以下の成分からなる総合感冒薬を販売することとなった。この男性には服用薬はなく、副作用歴、アレルギー歴のいずれもないことを確認した。

問314

この男性から、この総合感冒薬を服用した後に以下の症状の訴えがあった場合、直ちに服用を中止させ医師への受診勧奨を行わなければならない事例はどれか。2つ選べ。

  1. 便秘気味になった。
  2. 口が渇いた。
  3. 眠気を催した。
  4. 高熱が出て、目の粘膜に水ぶくれができた。
  5. 服用後すぐに息苦しさが現れた。

問315

その後、この男性が医療機関で受診したところ、当該症状は、医薬品の副作用であると診断され、副作用被害救済制度の説明がなされた。副作用被害救済制度に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 添付文書に記載されている用法・用量に従わずに使用した場合、救済の対象とならないことがある。
  2. 副作用被害救済制度には、葬祭料の支給に関する規定はない。
  3. 副作用被害救済の請求があった場合、対象となる疾病等が医薬品の副作用によるものであるかどうか等の医学的薬学的判定については厚生労働大臣が行う。
  4. 医薬品の副作用による疾病について医療費及び医療手当が支給されるには、必ず入院治療が行われる必要がある。
  5. 医薬品の副作用によって障害が残った場合、障害年金は障害の程度にかかわらず、一律決まった額が支給される。

 

 

 

 

 

正解.
問314:4, 5
問315:1, 3

 解 説     

問314

便秘はジヒドロコデインリン酸、口渇、眠気はクロルフェニラミンマレインの代表的な副作用です。これらは、副作用を感じたら服用をやめれば、受診勧奨は特に必要ありません。

選択肢 4,5 の症状は
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の副作用の疑いがあります。SJS は、死亡率 数 % にも及ぶ症状であり回復しても重度の後遺症の残る可能性があります。発症の初期に的確な治療を行うことが副作用の重篤化を防ぐことにつながります。そのため、これらの症状の訴えがあった場合、直ちに服用を中止させ医師への受診勧奨を行わなければなりません。

以上より、正解は 4,5 です。

問315

選択肢 1 は、正しい記述です。
副作用被害救済制度の目的は健康被害への救済です。しかし、勝手な使用法により生じた健康被害まで救済することが目的では、ありません。すなわち、医薬品の特殊性から、使用にあたり万全の注意を払ってもなお副作用の発生を防止しきれない場合があるがゆえに生じる健康被害の救済が、目的です。

選択肢 2 ですが
葬祭料も、救済制度の給付の種類に含まれます。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい記述です。
医学的薬学的な判定は、薬事・食品衛生審議会への諮問を行った上で審議会からの答申を受けて厚生労働大臣が行います。※ ちなみに 判定してください と 申出るのはPMDA です。健康被害者 → PMDA → 厚生労働大臣 ⇄ 薬事・食品衛生審議会という流れで、進んでいきます。

選択肢 4 ですが
副作用による疾病は「入院を必要とする程度のもの」とされていますが必ずしも入院が必要では、ありません。やむを得ず自宅療養を行っているが、入院治療が必要と認められる場合も救済の対象となります。一方で、仮に入院していたとしても、副作用による疾病だけを見ると入院治療を必要としない程度の場合は本救済制度の対象とはなりません。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
障害の程度によって、給付額が変わります。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

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