問 題
30歳男性。会社内昇格人事で1年前に営業職のリーダーを命じられた。リーダーとしての仕事に順応できず、ストレスを抱え、入眠困難、食欲低下が半年続いた。今回かかりつけのクリニックを受診し、軽症のうつ病と診断された。主治医より、治療薬について問い合わせがあった。
問258
主治医に推奨すべき薬剤の成分はどれか。2つ選べ。
- パロキセチン塩酸塩水和物
- クロザピン
- イフェンプロジル酒石酸塩
- ミルタザピン
- ラモトリギン
問259
前問で推奨した成分の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
- Na+チャネル遮断による神経興奮の抑制
- Cl-チャネル遮断によるGABA作動性神経系の抑制
- セロトニントランスポーター阻害によるセロトニン作動性神経系の活性化
- ノルアドレナリントランスポーター阻害によるノルアドレナリン作動性神経系の活性化
- シナプス前部のアドレナリンα2受容体遮断によるセロトニンとノルアドレナリンの放出促進
正解.
問258:1, 4
問259:3, 5
解 説
問258
選択肢 1 は、正しい選択肢です。
パロキセチン(パキシル)は、SSRI です。セロトニンの再取り込みを行うトランスポーターを選択的に阻害します。抗うつ薬の一種です。軽症のうつ病と診断された本問患者への推奨すべき薬剤の成分として適切であると考えられます。
選択肢 2 ですが
クロザピン(クロザリル)は、治療抵抗性統合失調症の治療薬です。軽症のうつ病と診断された本問患者への推奨すべき薬剤の成分としては不適切であると考えられます。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
イフェンプロジル(セロクラール)は、脳梗塞後遺症(や、それに伴うめまい)に用いる薬です。軽症のうつ病と診断された本問患者への推奨すべき薬剤の成分としては不適切であると考えられます。よって、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は、正しい選択肢です。
ミルタザピン(リフレックス、レメロン)は、NaSSA (ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)に分類される抗うつ薬の一種です。シナプス前の α2 受容体の阻害を介して中枢のノルアドレナリン、セロトニンの神経伝達を増強します。又、5-HT2 、5-HT3 受容体を阻害することで選択的に 5-HT1 受容体を活性化します。軽症のうつ病と診断された本問患者への推奨すべき薬剤の成分として適切であると考えられます。
選択肢 5 ですが
ラモトリギン(ラミクタール)は、てんかんの予防や双極性障害に用いられる薬です。軽症のうつ病と診断された本問患者への推奨すべき薬剤の成分としては不適切であると考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 1,4 です。
問259
前問の解説 の繰り返しになりますが、パロキセチン(パキシル)は、SSRI です。セロトニントランスポーターを阻害 → セロトニンの再取り込みを阻害 → セロトニン作動性神経系の活性化が作用機序です。
ミルタザピン(リフレックス、レメロン)は NaSSA です。シナプス前部のアドレナリン α2 受容体遮断によるセロトニンとノルアドレナリンの放出促進が作用機序です。又、5-HT2 、5-HT3 受容体を阻害することで選択的に 5-HT1 受容体を活性化します。
以上より、正解は 3,5 です。
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