問 題
80歳男性。特別養護老人ホームに入居中。発熱、食欲不振、全身の倦怠感、体重減少などの症状があり、病院で検査を受けた。胸部X線撮影で肺尖部陰影が認められ、喀痰検査で結核菌が検出されて結核と診断された。
問230
結核に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 主な感染経路は接触感染である。
- 最近(2009~2011年)、我が国では年間約千人の患者が新たに発生している。
- 最近(2009~2011年)、新たに発生した患者の約半数は70歳以上の高齢者である。
- DOTS(直接服薬確認療法)が行われている。
- 結核菌の消毒には消毒用エタノールは無効である。
問231
この患者には、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール塩酸塩が処方された。エタンブトール塩酸塩の最も重大な副作用として、薬剤師が留意しなければならないのはどれか。1つ選べ。
- 聴覚障害
- 腎機能障害
- 視力障害
- 嗅覚障害
- 味覚障害
正解.
問230:3, 4
問231:3
解 説
問230
選択肢 1 ですが
結核の主な感染経路は、空気感染、飛沫感染です。接触感染では、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
結核の新規登録者は、年間約 20000 人です。約千人では、ありません。よって、選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は、正しい記述です。
選択肢 5 ですが
結核菌の消毒に、消毒用エタノールは無効では、ありません。よって、選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
問231
エタンブトールの重大な副作用といえば視力障害です。早期に発見できれば、障害は可逆的なので服薬指導において、十分注意する必要があります。新聞を片目ずつ、一定の距離で読むことで早期に発見できる、という手法が知られています。
以上より、正解は 3 です。
(以下は、私見です。
徐々に新聞の購読率が落ちていることも考えると、新聞は読んでいるかを確認することを忘れないということや簡易視力検査表などを渡す、という対処も必要なのかと感じます。
また、高齢者の場合、既に段々目が悪くなっている と感じている場合においては、定期的な視力検査が行われるべきなのかとも思います。
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一方で、この視力障害のメカニズムについては亜鉛欠乏説などがあるようです。実際、エタンブトールの構造を見て第一印象は EDTA に似てる、、、→ 金属キレートして排出は、不合理ではない・・?という印象でした。
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結核は、世界中で毎年数百万人単位で発病している病気です。となれば、有効な治療薬の一つであるエタンブトールの重要性、副作用のメカニズムを解明し例えば「一緒に何かサプリメントを取れば、副作用回避できる」とか「そもそも、副作用軽減のための成分との合剤を作る」といった流れを日本が率先して構築できればとても有意義ではないか、と思います。
そこで、具体的にどのような実験デザインをすればよいのか、どのような治験、データ解析で、このビジョンを実現できるのかという観点において、薬学を網羅的に駆使したアプローチが求められるのではないかと思います。又、一方で「新しい計画のための叩き台-プロトタイプ-」があると物事をスムーズに実現しやすい、という実感を個人的に感じています。このような治験デザインの叩き台を私的な案として、ある程度短期間で提案することができるようになったら、、、と、明治時代における私的な憲法草案のことなどを連想しながら、想像しました。私見 終わり)
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