薬剤師国家試験 第99回 問222-223 過去問解説

 問 題     

56歳男性。身長165cm、体重63kg。直腸がんと診断され、フルオロウラシル・ホリナートカルシウム・イリノテカン塩酸塩水和物療法(FOLFIRI)とセツキシマブ(遺伝子組換え)製剤との併用療法が開始された。

問222

上記併用療法における医薬品の使用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. フルオロウラシルは、急速静注後、持続静注する。
  2. ホリナートカルシウムは、フルオロウラシルの副作用を抑制する目的で投与する。
  3. イリノテカン塩酸塩水和物は、フルオロウラシル投与後に点滴静注する。
  4. セツキシマブは、KRAS遺伝子変異の有無を考慮した上で使用する。

問223

図は、動物細胞の構造を模式的に表したものである。セツキシマブの標的分子である上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞における局在について、正しい場所を示しているのはどれか。1つ選べ。

 

 

 

 

 

正解.
問222:1, 4
問223:5

 解 説     

問222

本化学療法は FOLFIRI 療法として知られているレジメンです。

選択肢 1 は、正しい記述です。
5-FU は、濃度依存性の RNA 阻害による作用と、時間依存性の DNA 阻害による作用があるためそれぞれの効果を狙って、まず急速静注した後に持続静注を行う、という投与が行われます。

選択肢 2 ですが
ホリナートカルシウム(ロイコボリン)は、フルオロウラシルの作用増強に用いられます。副作用軽減の目的で用いられるのはメトトレキサートとの服用の場合です。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
イリノテカンの毒性発現が、投与順番に大きく影響されることが知られており、イリノテカンをフルオロウラシルより先に投与するレジメンが一般的となっています。よって、選択肢 3 は誤りです。

(個人的雑感
この例のように、複数の抗がん剤の投与においては相互作用が無視できないことが多く『投与内容だけではなく、時間軸に関する情報も極めて重要性の高い情報となり得る』という事が実感できると思います。正に、薬は 『物質+情報』といえる一例だと個人的に感じます。

又、このレジメンが確定するまでの多くの犠牲をデータとして含有しているがゆえの『適切な用法・用量での使用を徹底すること』の重み = 人類の薬物治療の歴史を尊重 → 更には発展させていくという役割を考えると、身が引き締まる思いがするのではないでしょうか。
参考) 大腸がんの標準的薬物治療の成り立ち について。日本化学療法学会雑誌のページ PDF へ)

選択肢 4 は、正しい記述です。

以上より、正解は 1,4 です。

問223

EGFR とは、上皮成長因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor)のことです。細胞膜表面に発現しており、上皮成長因子(EGF)が結合することにより MAPK 経路などの活性化を行う受容体型のチロシンキナーゼです。

以上より、正解は 5 です。

ちなみに、選択肢 1 ですが
核内受容体です。ステロイド受容体が代表例です。

選択肢 2 ですが
小胞体上の受容体です。筋小胞体上におけるリアノジン受容体が代表例です。

選択肢 3 ですが
細胞質内の受容体です。芳香族炭化水素受容体が代表例です。

選択肢 4 ですが
ミトコンドリア外膜上の受容体です。β 型膜タンパク質と呼ばれる分類に属するいくつかのタンパク質が知られています。

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