薬剤師国家試験 第99回 問1 過去問解説

 問 題     

塩化ナトリウム結晶中で働く相互作用のうち、主要なものはどれか。1つ選べ。

  1. ロンドン(分散)力
  2. 水素結合
  3. 静電相互作用
  4. 疎水性相互作用
  5. 双極子-双極子相互作用

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

選択肢 1 ですが
ロンドン(分散)力とは、無極性分子において、電子分布の揺らぎに伴う一時的な電気双極子間の相互作用により生じる力です。塩化ナトリウムは、異なる原子同士による分子で、分子の形に対称性も見られず無極性分子ではありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 ですが
水素結合とは、特に強い双極子相互作用のことです。O-H や、N-H における H と、他の分子における N や O や ハロゲンとの相互作用のことです。塩化ナトリウム結晶には、水素結合は働いていません。よって、選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は、正しい記述です。
静電相互作用とは、電場あるいは磁場から電荷が力を受けるような相互作用のことです。例としては、イオン結合における Na+ と Cl の相互作用が挙げられます。

選択肢 4 ですが
疎水性相互作用とは、疎水性化合物同士や、分子における疎水性領域が水中に存在する時に周囲の水分子からはじかれた結果集合体を形成するような相互作用のことです。弱い結合の代表の1つです。水中に油を垂らすと、油同士が集まろうとするのが例として挙げられます。塩化ナトリウムは塩であり、親水性分子です。そのため、疎水性相互作用は主要ではないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
双極子-双極子相互作用とは、2つの分子間において働く力であり分極している分子(双極子)間において生じるものです。例としては、H(δ+)-Cl(δ) H(δ+)-Cl(δ)間の相互作用が挙げられます。塩化ナトリウム結晶では分子を構成する原子の電気陰性度の差が大きく、分極ではなく電離してそれぞれの原子はイオン化しています。そのため、双極子-双極子相互作用は主要ではないと考えられます。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 3 です。

参考 物理化学まとめ 化学結合のなりたち

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