問 題
35歳男性。てんかんの持病があり、処方1によりコントロールされていた。
あるとき、2日間激しい下痢が続き、救急外来を受診した。患者からの聴取により黄色ブドウ球菌による食中毒が疑われた。医師が処方2を追加する際に、薬剤師に意見を求めてきた。
問280
医師に対する情報提供として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- ロペラミド塩酸塩カプセル1mgを追加すべきである。
- バルプロ酸の血中濃度の低下を懸念して、TDMを実施すべきである。
- バルプロ酸の副作用リスクが高まるため、肝機能検査を実施すべきである。
- ビフィズス菌錠は、耐性乳酸菌錠に変更すべきである。
- アンピシリンは、バルプロ酸との相互作用により中枢性けいれんを誘発するので、併用禁忌である。
問281
デパケンR錠は、マトリックス型の徐放錠である。マトリックス型徐放錠の特徴に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
- 服用後速やかに崩壊し、内包された徐放性顆粒から薬物が放出される。
- 速放性顆粒と徐放性顆粒を混合し、打錠した製剤である。
- 徐放層と速放層の2層からなる錠剤である。
- 速放性の外殻層と徐放性の内殻錠からなる錠剤である。
- 基剤中に薬物が均一に分散している。
正解.
問280:2, 4
問281:5
解 説
問280
食中毒の時に、下痢を無理に止めるのは、推奨されません。よって、下痢止めであるロペラミドを追加すべきであるとはいえません。選択肢 1 は誤りです。
デパケンRは、徐放性製剤です。そのため、服用後、一定時間消化管内に滞留する必要があります。本問の患者は、重篤な下痢状態であり、血中濃度が十分に上昇しない可能性があるため、血中濃度の低下を懸念して、TDM を実施すべきです。選択肢 2 はその通りの記述です。
アンピシリンは腎排泄の薬です。よって、肝機能検査を実施すべきであると情報提供するのは適切ではないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
抗生剤との併用であるため、耐性乳酸菌錠への変更を推奨するのは適切であると考えられます。選択肢 4 はその通りの記述です。
アンピシリンとバルプロ酸は、併用禁忌ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 2,4 です。
問281
デパケン R 錠は、マトリックス構造を核として外側を徐放性皮膜で覆った二重構造になっています。マトリックス型とは、基質(基剤)中に、薬物を分散させて錠剤とした製剤のことです。イメージとしては、スポンジに薬を含ませたようなものです。よって、正解は 5 です。
ちなみに、外側が速やかに溶け、内側に徐放性顆粒があるのはロンタブです。
速報性顆粒と徐放性顆粒を混合し打錠したのは、スパスタブです。
徐放層と速放層の2層からなるのは、スパンタブです。
速放性の外殻層と、徐放性の内殻錠からなる錠剤は、コーティング剤です。
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