薬剤師国家試験 第98回 問258-259 過去問解説

 問 題     

45歳女性。関節リウマチの治療を受けていたが、既存治療では効果不十分であったため、処方変更となり以下の処方せんを持って薬局を訪れた。

問258

患者に対する薬剤師の対応として、適切でないのはどれか。1つ選べ。

  1. 今回の処方変更の前に胸部レントゲン検査やツベルクリン反応などを受け、結核に感染していないことを患者に確認した。
  2. 本剤により免疫が抑制されるため、持続的な発熱やせきが出ても心配ないことを説明し、患者の不安を和らげた。
  3. 患者が事前に自己注射の十分な教育訓練を受け、自らが確実に自己注射できるかどうかを確認した。
  4. 紅斑、発赤、疼痛、腫脹、そう痒などの注射部位反応が報告されているので、投与毎に注射部位を変えるように指導した。
  5. 多発性硬化症などの脱髄疾患やうっ血性心不全の既往歴の有無を確認した。

問259

エタネルセプトの作用として正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 腫瘍壊死因子-α(TNF-α)に対するキメラ型モノクローナル抗体で、TNF-αと受容体の結合を選択的に阻害する。
  2. TNF受容体に対する完全ヒト型モノクローナル抗体で、TNF-αと受容体の結合を選択的に阻害する。
  3. ヒト型可溶性TNF受容体-Fc融合タンパク質で、TNF-αと細胞表面TNF受容体の結合量を選択的に抑制する。
  4. インターロイキン-6(IL-6)受容体に対するヒト型モノクローナル抗体であり、IL-6と受容体の結合を阻害する。
  5. 抗原提示細胞膜のCD80/CD86に結合し、CD28を介した共刺激シグナルを阻害する。

 

 

 

 

 

正解.
問258:2
問259:3

 解 説     

問258

エタネルセプト(エンブレル)は、ヒトTNF可溶性受容体と、IgGを結合させた組み換えタンパク質です。分子標的治療薬の一つで、関節リウマチなどの治療薬です。

重篤な副作用として、感染症や結核が知られています。そのため、投与に先立ち、胸部レントゲン検査及びツベルクリン反応検査などを行い、結核感染の有無を確認するよう警告が出ています。

免疫の抑制を引き起こす薬であるため、副作用として感染症があります。そのため、初期症状として、発熱やせきが出た時には、すぐに主治医に連絡をするように注意する必要があります。
よって、選択肢 2 は適切ではありません。

選択肢 3 ~ 5 はその通りの記述です。

以上より、正解は 2 です。

問259

エタネルセプト(エンブレル)は、ヒト型可溶性 TNF 受容体-Fc 融合タンパク質です。TNF-α と、細胞表面 TNF 受容体の結合を、選択的に阻害します。

以上より、正解は 3 です。

ちなみに、キメラ型の TNF-α モノクローナル抗体は、インフリキシマブ(レミケード)です。

TNF-αに対するヒト型モノクローナル抗体は、アダリムマブ(ヒュミラ)です。

IL-6 受容体抗体は、トシリズマブ(アクテムラ)です。

CD80/86 に結合するのは、アバタセプトです。

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