薬剤師国家試験 第98回 問114 過去問解説

 問 題     

図は、アロステリック酵素として知られるある酵素について、基質Aの濃度と反応初速度の関係を示したものである。

曲線1及び3は、酵素反応系に、それぞれ酵素に結合する物質X及びYを加え、また曲線2は何も加えずに測定した結果である。なお、X及びYは基質Aと構造上の類似性が低い。

この結果に関する考察のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. X及びYのいずれも存在しないとき、基質Aの濃度を高めていくと、ある濃度以上になると反応初速度が急に増加する。
  2. 基質Aの濃度が十分に高いときには、X、Yの存在あるいは非存在にかかわらず、反応初速度はほぼ等しい。
  3. Xの存在下では、酵素の基質Aに対する見かけの親和性が低下する。
  4. 基質Aの濃度が低いときには、Yによって酵素活性が阻害される。
  5. X及びYが結合する酵素の部位は、基質Aが結合する部位とは異なると考えられる。

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

曲線 2 に着目すると、確かに、基質Aの濃度を上げていった時、反応速度が急に増加しています。(左から3つめの◯から4つめの◯の間)選択肢 1 はその通りの記述です。

右端において、曲線1~3はどれも同じ程度の反応速度となっています。よって、選択肢 2 はその通りの記述です。

曲線 1 に着目すると、Xの存在下においては、基質濃度が小さくても、速度がどんどん増加しています。これは、酵素の基質Aに対する見かけの親和性が「増加している」と考えられます。よって、見かけの親和性が低下しているわけではないので、選択肢 3 は誤りです。

曲線 3 に着目すると、Yによって反応速度が下がっており、酵素活性が阻害されていると考えられます。又、選択肢 2 の記述のように、基質Aの濃度が十分に高い時は、反応速度はほぼ等しくなっています。よって、選択肢 4 はその通りの記述です。

酵素がアロステリックであるという記述に加え、X及びYは、構造上の類似性が低いとあることから選択肢 5 はその通りの記述であると考えられます。

以上より、正解は 3 です。

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