薬剤師国家試験 第98回 問110 過去問解説

 問 題     

図は、分子式C10H12O3の化合物(A)の1H-NMRスペクトル(500MHz,CDCl3)と部分拡大図である。この図から推定されるAの構造はどれか。1つ選べ。

なお、6.00ppm付近に現れる1H分の幅広いシグナルは重水を添加した後に消失した。また、7.26ppmのシグナルはCDCl3に含まれる微量のCHCl3に起因するものである。

 

 

 

 

 

正解.5

 解 説     

まず、6.8 ppmと 8.0 ppmあたりにそれぞれ 2H のピークがあり、これらは芳香環についたHです。(問題文にあるとおり、7.26ppm のピークは溶媒のピークなので無視してください。)この時点で、選択肢 2 は芳香環に H が 3 つしかついていないので、誤りとなります。

次に、4.3ppm あたりの 2H ですが、これは O や N などに隣接する C についた H のピークと推察されます。選択肢 3 と選択肢 6 は、O に隣接する C に結合する H は 1 つです。ここでは 2H のはずなので、誤りです。

選択肢 1 では、O に隣接する C に結合する H が 4 つもあります( 2H×2箇所 )。よって誤りです。

選択肢 4 は、そもそも O に隣接する C に結合する H がありません。これも誤りです。

ここまでで残ったのが選択肢 5 だけなので、これが正解です。確認のため、続きをみていきます。1.8ppm あたりのピークは 2H 分で、拡大図をみるとピークが 6 つに割れているのがわかります。つまり、ここに該当する H に結合した C の隣接する C につく H の合計が 5 つということになります。選択肢 5 はこれを満たしています。

1.0ppm 付近のピークは 3H 分で、ピークは 3 つに割れています。ということは隣接する H が 2 つということになり、やはり選択肢 5 がこの条件を満たします。

最後に、6.0ppm 付近に幅広いピークを持つ 1H がありますが、これは -OH 基の H に該当します。-OH 基の H は幅広いピークとなるのが特徴的なので、ぜひ覚えていてください。また、今回は 6.0ppm にピークがありますが、-OH 基の出現範囲は広いので、6ppm という数字は覚えてもあまり意味がありません。

問題文では重水を添加するとこのピークが消えたとありますが、これはフェノール性水酸基(-OH)が重水(D2O)で置換されて-OD になっていることを示しています。

以上より、正解は 5 です。

コメント