問 題
75歳男性。数年前の健康診断でPSAがやや高値(5.1ng/mL)であったが、自覚症状もないため、放置していた。最近になり、腹圧をかけないと尿が出なくなり、血尿が出現したため、泌尿器科を受診した。また、腰痛も自覚するようになった。
【検査所見】
直腸診により、前立腺は栗の実大であり、左右は非対称、また、一部に硬結が触知された。
腫瘍マーカー検査:PSA 40ng/mL、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP) 12ng/mL、(正常値 3ng/mL以下)
MRI検査:所属リンパ節の腫大が認められた。
骨シンチグラフィー検査:骨盤及び腰椎に硬化性病変が認められた。
問288
本症例に関する記述のうち、適切でないのはどれか。2つ選べ。
- 本症例は男性ホルモン依存性の疾患である。
- 本疾患は前立腺外腺の腫瘍化が主な原因である。
- PSAの高値は確定診断として用いられない。
- 放射線療法は適応とならない。
- 前立腺全摘除手術を行った後に薬物療法を行う。
問289
この患者に対して、初めて以下の薬剤が処方された。この患者に対する服薬指導の内容として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- 発熱、乾性咳嗽、全身倦怠感、呼吸困難の増悪が現れた場合には、服薬を継続して次回受診時に医師にその旨を伝えるように指導した。
- この処方薬を服用後、14日間休薬し、これを1クールとして服用を繰り返す必要があることを説明した。
- この薬は性腺刺激ホルモンの作用を弱める薬であることを説明した。
- 少なくとも1ヶ月に1回、定期的に肝機能検査を行う必要性を説明した。
正解.
問288:4, 5
問289:4
解 説
問288
前立腺がんは、前立腺の細胞が異常増殖して発生するがんです。前立腺がんは、男性ホルモンにより成長します。腫瘍マーカーとして、PSAがありますが、これだけでは確定診断とはなりません。確定診断は、前立腺から組織を採取して、生検を行います。
ホルモン療法が現在の治療の主流です。125I を放射線源とした、放射線療法も治療の選択肢の1つです。
以上より、正解は 4,5 です。
問289
フルタミドは、非ステロイド性の抗アンドロゲン(男性ホルモン)薬です。男性ホルモン受容体をブロックすることで、がん細胞の増殖を抑制します。性腺刺激ホルモンの作用を弱めるわけではないので、選択肢 3 は誤りです。
重い肝障害を起こしやすいという特徴があり、定期的な肝機能検査が必要です。全身倦怠感などが現れた時は、本剤の服用を中止し、直ちに受診するよう指導します。よって、選択肢 1 は、服薬を継続してとあるので、誤りです。
特に休薬期間は必要ないので、選択肢 2 は誤りです。
以上より、正解は 4 です。
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