問 題
65歳男性。甲状腺機能亢進症の治療を受けている。心房細動による頻脈のため、ジゴキシンによる治療が開始された。
問274
この治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ジゴキシンは治療域が狭い薬物なので、治療薬物モニタリング(TDM)を行う。
- 甲状腺機能亢進症の患者は、ジゴキシンの血中濃度が高くなり作用が増強することがあるので注意する。
- ジゴキシンは主に肝代謝により消失するので、肝障害時には減量する必要がある。
- 悪心、嘔吐、不整脈などの中毒症状に注意する。
問275
この患者におけるジゴキシンの全身クリアランスは4.0L/h、経口投与時のバイオアベイラビリティは80%である。定常状態平均血中濃度を1.0ng/mLに維持するための1日当たりの経口投与量(mg/day)はいくらか。1つ選べ。
- 0.004
- 0.032
- 0.096
- 0.120
- 0.250
正解.
問274:1, 4
問275:4
解 説
問274
ジゴキシンは、心不全治療薬です。強心配糖体の一種です。Na+/K+ ATPase を阻害することにより、心筋収縮力を像歳させます。副作用発現域と、治療域が近く、TDM 対象薬の一つです。
甲状腺機能亢進症の患者において、血中濃度が低くなることがあります。よって、血中濃度が高くなるわけではないので、選択肢 2 は誤りです。
ジゴキシンは、腎排泄型の薬です。腎疾患のある患者では、排泄遅延による中毒のおそれがあり、注意が必要です。主に肝代謝ではないので、選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 はその通りの記述です。
以上より、正解は 1,4 です。
問275
定常状態の平均血中濃度を Css とおくと、公式より Css = D/CL です。※ D は薬物投与量、CLは全身クリアランス
1日当たりの経口投与量を x (mg/day)とすると、バイオアベイラビリティが80%なので、D = 0.8x です。分かっている値を、単位に注意して代入すると
1 (ng/mL) = 0.8x (mg/day)/4 (L/h) です。
単位を揃えます。1Lは、1000 mL なので、4(L/h)=4000 (mL/h) です。
さらに、1day = 24h なので、4000 (mL/h) = 96000 (mL/day)です。
又、1ng = 0.001μg = 0.000001mg です。
以上より、0.000001(mg/mL) = 0.8x/96000 です。
両辺を 96000 倍して、0.096 = 0.8x つまり、0.012 = x となります。
以上より、正解は 4 です。
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