97回薬剤師国家試験 問272-273解説

 問 題     

50歳男性。てんかん治療のため以下の処方に従い服薬を続けている。定常状態時の血清中フェニトイン濃度を測定したところ12μg/mLであり、てんかん発作は安定している。

問272

この治療に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 過量投与により、眼振、構音障害、運動失調、眼筋麻痺などの症状が出現することがあるので十分観察する。
  2. フェニトインの薬理作用は、血清タンパク質と結合していない遊離形濃度ではなく、総血清中濃度と関連する。
  3. 定期的に肝・腎機能検査、血液検査を行うことが望ましい。
  4. 用量を増加させると、腎尿細管分泌が飽和するため、用量と血清中濃度の関係は非線形となる。

問273

定常状態におけるフェニトインの体内からの消失速度はMichaelis-Menten式で表される。この患者における最大消失速度(mg/day)に最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、Michaelis定数を8mg/L、バイオアベイラビリティを100%とする。

  1. 150
  2. 240
  3. 420
  4. 1,500
  5. 2,400
  6. 4,200

 

 

 

 

 

正解.
問272:1, 3
問273:3

 解 説     

問272

フェニトイン(アレビアチン)は、ヒダントイン系の抗てんかん薬の一種です。作用機序は、Naチャネル遮断です。神経細胞の興奮伝達を抑制します。薬理作用を示すのは、遊離型、すなわち、血清タンパク質と結合していない薬物分子です。よって、選択肢 2 は誤りです。

フェニトインは、非線形の薬物動態、すなわち、投与量と血中濃度などの体内動態パラメータが比例しない代表的な薬物として知られています。これは、肝臓での代謝が飽和することが原因で、急激に血中濃度が増加します。よって、選択肢 4 は誤りです。

過量投与により、眼振、構音障害、運動失調、眼筋麻痺などの症状が出現することがあり、定期的に肝・腎機能検査、血液検査を行うなどの注意が必要です。

以上より、正解は 1,3 です。

問273

フェニトイン散 10% 1日 2.5 g なので、実際のフェニトインの量は 0.25g = 250mg/day です。
又、定常状態の血清中フェニトイン濃度は 12 μg/mL = 12mg/L と単位を mg , L に合わせることができます。

Michaelis-Menten 式 に、分かった値を代入すると、以下にようになります。

つまり

なので、これを解くと Vmax = 420 です。

以上より、正解は 3 です。

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