問 題
56歳男性。骨髄内臍帯血移植が行われた。移植後、真菌感染症が疑われ、以下の処方について主治医から医薬品情報管理室に相談があった。
問262
主治医からの相談に対する医薬品情報管理室の薬剤師の対応として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 添付文書によりアムホテリシンBリポソーム製剤の用法・用量を確認した。
- アムホテリシンBリポソーム製剤の調製法と注意点を伝えた。
- 医薬品適正使用のために、真菌感染症の診断が確定した後で処方するように提案した。
- 投与中に発熱、悪寒、悪心などが発現した場合、点滴を一時中断し、患者の様子を見るように伝えた。
- 副作用防止のため、腎機能、肝機能、血清電解質の検査を定期的に行うように提案した。
問263
アムホテリシンBに関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。
- エルゴステロール生合成を阻害し、真菌細胞膜合成を抑制する。
- 真菌細胞膜のエルゴステロールに結合し、真菌細胞膜を障害する。
- 真菌細胞壁を構成するβ-グルカン生合成を阻害する。
- 真菌細胞内でフルオロウラシルに変換され、真菌のDNA及びRNA合成を阻害する。
- スクアレンエポキシダーゼを活性化し、エルゴステロールの分解を促進させ、真菌細胞膜を障害する。
正解.
問262:3
問263:2
解 説
問262
注射用アムホテリシンBリポソーム製剤(アムビゾーム)は、抗真菌薬として古くから使われるポリエン系抗生物質の一つであるアムホテリシンBの副作用を軽減するために開発されたリポソーム製剤です。とはいえ、様々な副作用が報告されており、定期的血液検査が推奨されています。
この薬は、体重 1 kg 当り、アムホテリシンBとして 2.5mg (力価)を、1日1回、1~2時間以上かけて点滴静注します。適応により、最大量や、投与スケジュールが異なります。
注射液の調製は、バイアルごとに、注射用水12mLを加え、直ちに激しく振り混ぜます。そして、フィルターろ過させた液を、5%ブドウ糖注射液に加え、静注用希釈液とします。希釈には、電解質溶液を使用しないよう、注意が必要です。(濁る場合があるためです)
本注射剤の適応は、幅広い真菌感染症及び、真菌感染が疑われる発熱性好中球減少症です。真菌感染症の診断が確定した後で処方する必要があるとはいえません。よって、選択肢 3 は誤りです。
以上より、正解は 3 です。
問263
アムホテリシンBは、ポリエン系抗生物質の1つです。真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールと結合し、膜障害を起こし、殺菌的に作用します。
以上より、正解は 2 です。
ちなみに、エルゴステロール生合成を阻害するのは、アゾール系抗真菌薬です。
β-グルカン生合成を阻害するのは、キャンディン系抗真菌薬です。
真菌細胞内でフルオロウラシルに変換されるのは、フルシトシンです。
スクアレンエポキシダーゼを「阻害」するのは、テルビナフィンや、ブテナフィンです。
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