薬剤師国家試験 第97回 問248-249 過去問解説

 問 題     

67歳男性。災害時、救護所に本人のお薬手帳を持参し、医師に処方を求めた。お薬手帳を確認したところ、エナラプリルマレイン酸塩錠を服用していたことが判明した。救護所にはエナラプリルマレイン酸塩錠が置いていなかった。

問248

エナラプリルマレイン酸塩錠の代替薬として、以下の在庫品目のうち、薬剤師が医師に提案する最も適切な薬剤はどれか。1つ選べ。

  1. トラネキサム酸カプセル
  2. バルサルタン錠
  3. デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠
  4. ニトログリセリン舌下錠
  5. セフジニルカプセル

問249

エナラプリルの薬理作用の機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. アンギオテンシン変換酵素を阻害して、アンギオテンシンⅡの生成を抑制する。
  2. アンギオテンシンⅡ受容体を遮断して、アンギオテンシンⅡによる血管収縮を抑制する。
  3. キニナーゼⅡを阻害して、ブラジキニン量を増加させる。
  4. 一酸化窒素合成酵素を阻害して、一酸化窒素の生成を抑制する。
  5. ホスホリパーゼA2を阻害して、プロスタグランジンの生成を抑制する。

 

 

 

 

 

正解.
問248:2
問249:1, 3

 解 説     

問248

エナラプリルマレイン酸は、ACE 阻害剤です。降圧薬の一種です。

トラネキサム酸(トランサミン)は、止血作用、抗炎症作用を持ち、出血傾向や、口内炎などに
幅広く用いられる、比較的副作用の少ない薬です。降圧薬の代替薬としては不適切と考えられるため、選択肢 1 は誤りです。

バルサルタン錠(ディオバン)は、AT II 受容体拮抗薬(ARB)です。作用としては ACE 阻害薬に近い降圧薬です。

デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物錠(メジコン)は、咳中枢を抑制することによる
鎮咳薬です。降圧薬の代替薬としては不適切と考えられるため、選択肢 3 は誤りです。

ニトログリセリン舌下錠は、狭心症の発作に対して用いられる硝酸薬です。降圧薬の代替薬としては不適切と考えられるため、選択肢 4 は誤りです。

セフジニルカプセル(セフゾン)は、セフェム系の抗生物質です。抗菌薬です。降圧薬の代替薬としては不適切と考えられるため、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

問249

エナラプリルは、ACE 阻害剤です。すなわち、アンギオテンシン変換酵素を阻害することで、アンギオテンシン II の生成を阻害します。

又、アンギオテンシン変換酵素と、キニナーゼ II は同等の酵素です。共に ACE 阻害剤によって阻害されます。キニナーゼ II は、ブラジキニンという9個のアミノ酸からなるペプチドオータコイドを分解する酵素です。※オータコイドとは、体内で産生され、微量で生理活性を示す、ホルモン及び神経伝達物質以外の総称です。

ACE 阻害剤は、キニナーゼ II を阻害することにより、ブラジキニン量を増加させます。ブラジキニンは、血圧降下作用を持ちます。

以上より、正解は 1,3 です。

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