薬剤師国家試験 第97回 問220-221 過去問解説

 問 題     

ヒトの血糖及びその調節に関する以下の問に答えよ。

問220

糖代謝に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。

  1. 血液中のD-グルコースは、脳の活動にとって必須の物質である。
  2. 筋肉で生成した乳酸は、肝臓に運ばれてD-グルコースへと変換される。
  3. グリコーゲンは、UDP-グルコースを基質とし、グリコーゲンシンターゼの作用により合成される。
  4. 筋肉では、グリコーゲンが分解され、血液中にD-グルコースが放出される。
  5. アドレナリン(エピネフリン)により、肝臓から血液中へのD-グルコースの放出が促進される。

問221

高血糖の患者の症状を悪化させる可能性のある薬物はどれか。2つ選べ。

  1. メトトレキサート
  2. クエチアピンフマル酸塩
  3. プレドニゾロン
  4. ランソプラゾール
  5. ビルダグリプチン

 

 

 

 

 

正解.
問220:4
問221:2, 3

 解 説     

問220

選択肢 1 ~ 3 は、その通りの記述です。


選択肢 4 ですが
筋肉においてグリコーゲンが分解されて、グリコーゲン → G1P → G6P となります。ここで、筋肉(及び脳)に特徴的なポイントとして、グルコース-6-ホスファターゼがない という点があげられます。このため、G6P がグルコースになることはありません。グルコースが生成されるわけではないので、グリコーゲン分解に伴い、血中に D-グルコース が放出されるわけではないと考えられます。選択肢 4 は誤りです。

ちなみにですが
筋肉で生成した乳酸が、肝臓に運ばれ、グルコースへと変換される経路コリ回路と呼ばれます。


選択肢 5 は、その通りの記述です。
肝臓は、空腹期間などにおいて、糖新生によりグルコースを供給しています。一方で、食事の直後はインスリンによって、グリコーゲン分解や糖新生は抑制されます。つまり、肝臓によるグルコース放出は、各種のホルモンによって調節されます。グルコース放出を促進する代表的なホルモンは、アドレナリンやグルカゴンです。


以上より、正解は 4 です。

問221

メトトレキサート(リウマトレックス)は、DMARDs(:疾患修飾性抗リウマチ薬)の一種です。免疫抑制剤の一種であるため、代表的な副作用としては白血球減少や間質性肺炎などがあります。高血糖に対して、症状を悪化させるような報告は、本試験実施現在、ありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

クエチアピン(セロクエル)は、MARTA(multi-acting-receptor-targeted-antipsychotics)です。統合失調症薬として用いられます。副作用として高血糖が出ることがよく知られており、糖尿病患者には禁忌となっています。

プレドニゾロン(プレドニン)は、ステロイド薬です。炎症をしずめたり、免疫系をおさえる作用があります。アレルギー性の病気や、めまい、耳鳴り、顔面神経麻痺など、広く用いられます。多様な副作用があり、高血糖も副作用として知られています。

ランソプラゾール(タケプロン)は、PPI(プロトンポンプ阻害薬)です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎に用いられます。ヘリコバクター・ピロリ除菌にも用いられます。高血糖に対して、症状を悪化させるような報告は、本試験実施現在、ありません。よって、選択肢 4 は誤りです。

ビルダクリプチン(エクア)は、DPP-4 阻害薬です。DPP-4は、GLP-1を分解する酵素です。血糖依存的にインスリン分泌を促進すると共にグルカゴン分泌を抑制します。血糖値を下げる薬なので、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

コメント

  1. 84fc より:

    グリコーゲンの分解でグルコース1リン酸は生成されますがその後グルコース6リン酸を経て筋肉における解糖系を経てエネルギーになると思います。
    ですので4の答えの誤っている部分は筋肉ではなく肝臓ということになると思います。

  2. kazupiko より:

    確かに筋肉中で、グリコーゲンが分解され、グリコーゲン→G1P→G6P になって、解糖系に入ってエネルギーになると思われます。

    ただ、筋肉にはグルコースー6-ホスファターゼが存在しないため、グルコースにはならない、ということから誤り と考え、解説を修正しました。

    コメントありがとうございます!