問 題
乳癌の治療に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- トラスツズマブは、HER2(human epidermal growth factor receptor type 2)が過剰発現している転移性乳癌に用いられる。
- ゴセレリン酢酸塩は、骨塩量の低下を引き起こす。
- アナストロゾールは、閉経前乳癌の治療に用いられる。
- タモキシフェンクエン酸塩は、子宮体癌のリスクを増大させる。
- パミドロン酸二ナトリウム水和物は、骨転移をきたした場合に用いられる。
解 説
トラスツズマブ(ハーセプチン®)は、ヒトがん遺伝子HER2/neu の遺伝子産物である HER2 タンパクに特異的に結合することで抗腫瘍効果を示す、分子標的治療薬です。抗体医薬品の一種です。HER2 が過剰発現されている転移性乳がんや、HER2 が過剰発現している乳がんにおける術後補助化学療法に用いられます。
ゴセレリン酢酸塩は、前立腺がんおよび閉経前乳がんのホルモン両方に用いられる薬です。LH - RH アゴニストです。LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)は、脳の視床下部下垂体に作用し、LH(黄体形成ホルモン)や FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌を促進します。
一時的に LH の分泌が高まるのですが、その後受容体が減少し(ダウンレギュレーション)、その結果として LH や FSH の分泌は抑制されます。LH や FSH の分泌抑制の結果、男性ホルモン及び女性ホルモンの産生が低下することになります。骨粗しょう症が、閉経後に急激に進行することを連想するとよいのですが、女性ホルモンの量が減ると、骨塩量は減少します。
アナストロゾール(アリミデックス®)は、アロマターゼ阻害薬です。アロマターゼという酵素は、エストロゲン(女性ホルモン)合成を担っています。特に、閉経した女性のエストロゲンが、アロマターゼにより合成されます。閉経後乳がんの治療に用いられます。よって、閉経前乳がんの治療には用いられないので、選択肢 3 は誤りです。
タモキシフェンクエン酸塩(ノルバデックス®)は、非ステロイド性の、抗エストロゲン剤です。抗がん剤の一種です。服用により、子宮体がんなどの発症が見られることがあります。
パミドロン酸ニナトリウム水和物は、ビスホスホネート製剤です。破骨細胞の機能を抑制します。骨粗しょう症ではなく、悪性腫瘍による高カルシウム血しょうや乳がんの溶骨性骨転移に使用されます。
がんが骨転移すると、がん細胞から、破骨細胞を活性化させる生理活性物質が放出され骨吸収が亢進します。これにより、疼痛が生じます。パミドロン酸ニナトリウム水和物は、破骨細胞の機能を抑制するため、骨転移による疼痛抑制作用を示します。
以上より、正解は 3 です。
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