問 題
薬物の溶解及び製剤からの放出に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- ヒグチ(Higuchi)の式において、放出される薬物の累積量は時間の平方根に比例する。
- ヒクソン-クロウェル(Hixson-Crowell)の式は、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式である。
- 固体分散体中の薬物は、その薬物結晶に比べて溶解速度が小さい。
- 安定形の結晶は、準安定形の結晶に比べて溶解速度が大きい。
- 無水物は、水和物に比べて水中での溶解速度が大きい。
解 説
ヒグチ(Higuchi)の式とは、以下で表されるようなマトリックス型製剤における薬物の放出量と、時間の間に成り立つ関係式です。イメージとしては、表面から放出されるため、だんだん放出量が少なくなり、放出量が時間の平方根に比例する(単純に、時間に比例するわけではない)という関係式です。
一般に、「固体」の薬物がマトリックス全体に分散している時ははるかに溶解度よりもAが大きい、すなわち、A>>Cs なので、近似した以下の式が用いられます。
ヒクソン-クロウェルの式は、溶解における固体薬物の表面積の減少を考慮に入れた、溶解現象における質量と時間の関係を表す式です。式は、以下で表されます。
Hixson-Crowell式では、2つの条件が仮定されています。すなわち、初期濃度が溶解度よりはるかに小さいこと(シンク条件と呼ばれます)と、粒子径一定の粒子が、球状を保ちつつ溶解するという仮定です。よって、粒度分布を持つ粉体の溶解現象を表す式ではないので、選択肢 2 は誤りです。
難溶性の物質を、固体分散体とすることで、溶解性が飛躍的に向上することが知られています。よって、固体分散体中の薬物の方が溶解速度が一般的に速いので選択肢 3 は誤りです。
準安定系の方が、安定系よりも溶解速度は大きくなります。(イメージとしては、準安定系の方が、エネルギー的に不安定であり、溶液に溶けた状態というのはとても安定な状態なので、より速く安定になりたいため速く溶けるイメージです。就職活動で、何社も落ちている状態の人(準安定系のたとえ)が、どんな所でもいいからとりあえず内定 1 つもらいたくなる(速く安定したい)心理と対比すると、記憶しやすいかもしれません。)よって、選択肢 4 は誤りです。
無水物の方が、水和物に比べて水中での溶解速度が大きいです。(イメージとしては、準安定系と同様に、無水物の方がエネルギー的に不安定であり、溶液に溶けた状態というのは、とても安定な状態なのでより速く安定になりたいため、速く溶けるイメージです。補足として、なぜ水和物の方が安定かといえば、溶媒に取り囲まれることによる溶媒和の影響が大きな要因と考えられます。)
以上より、正解は 1,5 です。
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