薬剤師国家試験 第97回 問171 過去問解説

 問 題     

薬物Bの併用が薬物Aの体内動態に及ぼす影響として、正しいのはどれか。2つ選べ。

  •   薬物A        薬物B         影響
  1. リボフラビン    メトクロプラミド   消化管吸収の促進
  2. トリアゾラム    エリスロマイシン   肝代謝の阻害
  3. サリチル酸     炭酸水素ナトリウム  尿細管再吸収の促進
  4. メトトレキサート  プロベネシド     尿細管分泌の阻害

 

 

 

 

 

正解.2, 4

 解 説     

リボフラビンは、別名ビタミン B2 です。リボフラビンは、十二指腸の限られた領域でゆっくり吸収されます。そのため、胃内容排出速度(gastric emptying rate : GER)の影響を受けます。具体的には、GER を増加させるような薬物と併用することで、吸収量が低下します。※一般的には、GER が増加した場合、薬物の吸収速度は速くなり、吸収量は増加します。

メトクロプラミドは、D2 受容体を遮断することで、胃腸の運動を活発にします。GER を増加させる薬物です。よって、影響は、消化管吸収の抑制です。促進ではないため選択肢 1 は誤りです。

エリスロマイシンは、マクロライド系抗生物質です。CYP3A4 で代謝されます。トリアゾラムは、ベンゾジアゼピン(Bz)系の睡眠薬です。やはりCYP3A4 で代謝されます。そのため、代謝の競合がおき、肝代謝が阻害されます。すなわち、睡眠作用が増強されることが知られています。

炭酸水素ナトリウムは、制酸薬です。服用により、尿の pH はアルカリ側に変化します。すると、サリチル酸のような酸性物質はイオン形の割合が多くなります。(参考: Henderson-Hasselbalch の式について 製剤学まとめ 物質の溶解に対して酸・塩基反応が果たす役割

尿細管における再吸収は受動拡散なので、イオン形が多くなれば再吸収は減少します。よって
影響は、尿細管再吸収の「増加」ではないので、選択肢 3 は誤りです。

メトトレキサートは、葉酸代謝拮抗薬です。近位尿細管において、有機アニオン輸送系により、分泌されることが知られています。又、プロベネシドは、尿酸排泄薬です。やはり、近位尿細管において、有機アニオン輸送系により分泌されることが知られています。併用することで尿細管分泌が阻害されます。

以上より、正解は 2,4 です。

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