薬剤師国家試験 第97回 問118 過去問解説

 問 題     

免疫に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ナチュラルキラー (NK) 細胞は、あらかじめ抗原感作を受けなくとも、腫瘍細胞やウイルス感染細胞を傷害する。
  2. マクロファージの表面にある Toll 様レセプターは、細菌の菌体成分の識別のための受容体としてはたらく。
  3. 好中球が同一の異物により反復刺激を受けると、記憶細胞となり食作用が増強される。
  4. T 細胞は、細胞表面に免疫グロブリンをもたないため、抗原を認識することができない。
  5. 肥満細胞 (マスト細胞) は、細胞表面の主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) クラスⅡ分子により抗原を認識する。

 

 

 

 

 

正解.1, 2

 解 説     

選択肢 1 はその通りの記述です。
抗原感作を受けて、細胞障害性を示すのは、キラーT細胞と呼ばれるT細胞です。抗原掲示を行うのは、マクロファージなどの細胞です。

選択肢 2 はその通りの記述です。
Toll 様受容体とは、動物の細胞表面にある受容体で、自然免疫機構における異物の感知を担っています。好中球、マクロファージ、樹状細胞などで発現しています。ちなみに、Toll はドイツ語で”規格はずれな”の意味とのことです。

抗原による刺激を受けて記憶細胞となるのは、B 細胞です。よって好中球ではないので、選択肢 3 は誤りです。ちなみに B 細胞の B とは、ファブリキウス嚢(bursa of Fabricius)の B に由来するそうです。鳥類固有の器官で、B 細胞の成熟に必要な器官です。


T 細胞は、細胞表面に特徴的な T 細胞受容体(TCR:T cell receptor)を有しています。抗原掲示細胞による抗原掲示によって、抗原を認識するため、抗原を認識できないとはいえません。よって、選択肢 4 は誤りです。ちなみに T 細胞の T とは、Thymus(胸腺)の T に由来するそうです。T 細胞が成熟する器官が胸腺です。


肥満細胞は、まず細胞表面に IgE が結合し、その IgE に抗原が結合し IgE に架橋が形成されると、ヒスタミンなどの放出が行われます。よって、MHC クラス II 分子は関与しないため、選択肢 5 は誤りです。

ちなみに
MHCクラス分子とは、細胞表面の抗原をキャッチする部分です。クラスⅠとⅡが存在します。クラスⅠ分子は、ほどんど全ての細胞表面に発現しています。クラスⅡ分子は、樹状細胞やマクロファージ、B 細胞などの限られた細胞に発現しています。クラスⅡ分子を持った抗原掲示細胞は、CD4 という分子が細胞表面に存在するような細胞(CD4陽性T細胞、ヘルパーT細胞とも呼ばれます)と相互作用を受けます。

イメージとしては、クラス II 分子の発現している細胞は、選ばれし情報伝達の精鋭達です。そして、その精鋭と接することができるのもごく一部なので、CD4 という証がついた細胞しか相互作用できないと考えると、理解しやすいかもしれません。

また、肥満細胞という名前ですが
実際の肥満とは何の関係もありません。顕微鏡で見た時の見た目が名前の由来だそうです。


以上より、正解は 1,2 です。

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