問 題
58 歳男性。体重 62 kg、体表面積 1.72 m2。 2 年前、S 状結腸がん(Stage Ⅲ)と診断され、S 状結腸切除術が施行された。
その後、術後補助化学療法として FOLFOX 療法(オキサリプラチン、レボホリナートカルシウム、フルオロウラシル)を 12 コース施行し、外来通院にて定期検査を実施していた。
しかし、 2 ケ月前の定期検査の際、肝転移が見つかった。主治医が診察及び面談を行い、患者の希望や検査結果を踏まえ、FOLFIRI + パニツムマブ療法の導入が検討されている。
| 投与量 | 投与スケジュール | ||
|---|---|---|---|
| 処方 1 | パニツムマブ(遺伝子組換え)注 | 6 mg/kg | day 1 |
| 処方 2 | イリノテカン塩酸塩注射液 | 150 mg/m2 | day 1 |
| 処方 3 | レボホリナートカルシウム水和物注射液 | 200 mg/m2 | day 1 |
| 処方 4 | フルオロウラシル注射液 | 400 mg/m2 | day 1 |
| 処方 5 | フルオロウラシル注射液 | 2,400 mg/m2 | day 1,2 |
病棟カンファレンスに参加する際、この薬物治療に関して病棟担当薬剤師が留意する情報として、適切なのはどれか。 2 つ選べ。
- 処方 1 の薬剤は、RAS 遺伝子が変異型であることを確認した上で使用すること。
- UGT1A1 の酵素活性が低下する遺伝子型を持つ患者では、処方 2 の薬剤による骨髄抑制の発現率が高まること。
- 処方 3 の薬剤は、処方 4 及び 5 の薬剤の抗腫瘍効果を高めるために使用すること。
- 処方 4 及び 5 の薬剤は、生理食塩液との混和を避けること。
- 処方 5 の薬剤は、腕などの末梢静脈から投与すること。
解 説
選択肢 1 ですが
パニツムマブはヒト型抗 EGFR モノクローナル抗体です。有効性を前もって評価するために RAS (KRAS 及び NRAS) 遺伝子の検査を行います。そして「変異がなかった」場合に使用します。「変異型であることを確認した上で使用」ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
イリノテカンは、カルボキシルエステラーゼにより活性代謝物 SN-38 に変換され、UDP – グルクロン酸転移酵素により、グルクロン酸抱合を受けて不活性化します。
そして、UGT1A1 はイリノテカンの活性代謝物の代謝酵素です。多型が知られており、酵素活性が低下する遺伝子型を持つ患者では副作用である 骨髄抑制 が起こりやすくなることが知られています。
選択肢 3 は妥当です。
レボホリナートカルシウムは、 フルオロウラシル (5 – FU) の効果を高めるために使用します。
選択肢 4 ですが
フルオロウラシル注射液は、通常、希釈に生理食塩液や 5 %ブドウ糖注射液などが用いられます。ちなみに、生理食塩水との混和を避ける代表的な薬剤として、ナファモスタットやガベキサートなどがあげられます。
選択肢 5 ですが
処方 5 は 投与量、投与スケジュールから「長時間かけての持続静注」と読み取れます。末梢の細い血管から長時間投与すると、強い炎症や血管痛が起きうるため、中心静脈から投与します。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 342 の正解は 2,3 です。

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