薬剤師国家試験 第110回 問340 過去問解説

 問 題     

65 歳男性。身長 178 cm、体重 75 kg。食道がんの術前・術後の栄養管理に栄養サポートチーム (NST) が介入することになった。

術前においては、本患者の食道に通過障害はあるものの、水分摂取は可能で食道以外に障害はなかった。術後においても、水分摂取は可能であった。

この患者に対する栄養療法に関する記述として適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. 術前の栄養管理は、経腸栄養療法は実施できない。
  2. 術後の栄養管理には、経腸栄養療法が適している。
  3. 末梢静脈栄養療法では 1 日で必要な糖質量を摂取できる。
  4. 経腸栄養剤としては、消化態栄養剤よりも半消化態栄養剤の方が適している。
  5. 経腸栄養療法よりも、中心静脈栄養療法の方が感染性リスクは少ない。

 

 

 

 

 

正解.2, 4

 解 説     

100 – 344 と同設定、「関与 → 介入」など 多少文言が修正 されている問題です。過去問演習で見たことがあると感じた人もいたかもしれません。


選択肢 1 ですが
まず、栄養不良があると手術後の合併症発生率や死亡率の上昇が知られています。そのため、術前の栄養管理が重要です。

そして、食道がんなどでは 通過障害のため十分な経口摂取ができない場合が多いです。そのため、経腸栄養療法も術前の栄養管理において考量します。つまり、術前の栄養管理で経腸栄養療法が実施できない、ということはありません。よって、選択肢 1 は誤りです。


選択肢 2 は妥当です。

補足しますと術後は、経口摂取は期待できません。しかし、腸管は使用できます。また「When gut works, use it」といわれるように、可能な限り腸管を使用することが栄養管理では、推奨されます。従って、術後の栄養管理には経腸栄養療法が適していると考えられます。


選択肢 3 ですが

末梢の静脈からでは、十分な栄養補給はできません。不足分を補充する手法であると考えればよいです。「1 日で必要な糖質量を摂取できる」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は妥当です。
補足として、半消化態栄養剤は、タンパク質や多糖類の形で栄養素が含まれている栄養剤です。体内での消化が必要な栄養剤です。例) エンシュア、アミノレバン)

成分栄養剤は、アミノ酸などの形で栄養素が含まれている栄養剤です。ほとんど消化を必要としない栄養剤です。例) エレンタール)


選択肢 5 ですが
経腸栄養であれば腸内免疫を介した後に血中に栄養が送られます。一方、中心静脈栄養療法では ダイレクトに血中に栄養を送り込むため、感染リスクはより高いです。「中心静脈栄養療法の方が感染性リスクは少ない」わけではありません。よって、選択肢 5 は誤りです。


以上より、正解は 2,4 です。

類題 100-344
https://yaku-tik.com/yakugaku/100-344/

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