薬剤師国家試験 第100回 問344 過去問解説

 問 題     

65歳男性。身長178cm、体重75kg。食道がんの術前・術後の栄養管理に栄養サポートチーム(NST)が関与することになった。ただし、本患者の食道に通過障害はあるものの、水分摂取は可能で食道以外に障害はなかった。術後においても、水分摂取は可能であった。

この患者に対する栄養療法に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 術前の栄養管理は、経腸栄養療法は実施できない。
  2. 術後の栄養管理には、経腸栄養療法が適している。
  3. 末梢静脈栄養療法では、1日あたりに必要となる糖質量を投与することができない。
  4. 経腸栄養剤としては、半消化態栄養剤よりも成分栄養剤の方が適している。
  5. 経腸栄養療法よりも、中心静脈栄養療法の方が感染性リスクは少ない。

 

 

 

 

 

正解.2, 3

 解 説     

選択肢 1 ですが
まず、栄養不良があると手術後の合併症発生率や死亡率の上昇が知られています。そのため、術前の栄養管理が重要です。そして、食道がんなどでは、通過障害のため十分な経口摂取ができない場合が多いです。そのため、経腸栄養療法も術前の栄養管理において考量します。つまり、術前の栄養管理で経腸栄養療法が実施できない、ということはありません。よって、選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は、正しい選択肢です。
補足しますと術後は、経口摂取は期待できません。しかし、腸管は使用できます。また「When gut works, use it」といわれるように、可能な限り腸管を使用することが栄養管理では、推奨されます。従って、術後の栄養管理には経腸栄養療法が適していると考えられます。

選択肢 3 は、正しい選択肢です。
補足しますと、末梢の静脈からでは十分な栄養補給はできません。不足分を補充する手法であると考えればよいです。

選択肢 4 ですが
半消化態栄養剤とは、タンパク質や多糖類の形で栄養素が含まれている栄養剤です。体内での消化が必要な栄養剤です。例) エンシュア、アミノレバン)

成分栄養剤とは、アミノ酸などの形で栄養素が含まれている栄養剤です。ほとんど消化を必要としない栄養剤です。例) エレンタール)

これらは、消化管の残存能力などにより使い分けます。より食事に近い半消化態栄養剤が適していることも十分考えられるため成分栄養剤の方が適しているとはいいきれないと考えられます。よって、選択肢 4 は誤りです。


選択肢 5 ですが
中心静脈栄養両方の方が、ダイレクトに血中に栄養を送り込むのですから感染リスクはより高いです。よって、選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2,3 です。

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