問 題
体育の新任教諭が初めてプール水の遊離残留塩素と pH を測定することになった。学校薬剤師は測定にあたっての留意点について新任教諭から問合せを受けた。
問204
pH計に関する記述として正しいのはどれか。2 つ選べ。
- 参照電極にはガラス電極を用いる。
- 指示電極の電位はネルンストの式に従う。
- 測定される pH は温度の影響を受けない。
- 校正された pH 計の電位を基準としてプール水の pH が測定される。
- 参照電極の内部液には飽和塩化アンモニウム水溶液が用いられる。
問205
学校薬剤師の回答として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 測定時期は、遊離残留塩素と pH の両方ともプール使用後です。
- 遊離残留塩素と pH の両方とも少なくともプール内の対角線上のほぼ等間隔の 3 ケ所から採水して測定してください。
- 遊離残留塩素濃度は、塩素剤の消毒効果を表す指標です。
- 入泳者が持ち込んだ汚れや毛髪が原因で遊離残留塩素濃度が高くなります。
- pH の値によらず塩素剤の消毒効果は変わりません。
問206
その後、同教諭が遊離残留塩素を測定したところ、基準値を下回っていたため、消毒剤を追加することとなった。屋内プールの水質管理を担当していた別の教諭が、水処理に使用される消毒剤 A と凝集剤 B を誤って混合したため、ガス C が発生した。
消毒剤A、凝集剤 B 及びガス C の組合せのうち、該当するのはどれか。1 つ選べ。
- 消毒剤 A 凝集剤 B ガス C
- 次亜塩素酸ナトリウム 重炭酸ナトリウム ホルムアルデヒド
- 次亜塩素酸ナトリウム チオ硫酸ナトリウム 塩化水素
- 次亜塩素酸ナトリウム ポリ塩化アルミニウム 塩素
- 塩素化イソシアヌル酸 重炭酸ナトリウム 二酸化炭素
- 塩素化イソシアヌル酸 チオ硫酸ナトリウム 硫化水素
- 塩素化イソシアヌル酸 ポリ塩化アルミニウム クロロホルム
問207
屋内プールで刺激臭がするという連絡を受けて駆けつけた学校薬剤師が、検知管と真空方式ガス採取器を用いてガス C の濃度を測定することになった。
ガス C の測定に用いられる検知管の取扱い及び測定方法に関する記述として、正しいのはどれか。2 つ選べ。

- 冷蔵庫で保存した検知管は、取り出したら直ちに使用することができる。
- 両端を折り取ったのちに使用しなかった検知管は、アルミホイルに包んで冷蔵庫で保存することができる。
- 検知管の変色層の先端面が斜めの場合には、中間点を濃度として読み取る。
- 真空方式ガス採取器は、漏れがないことを確認したのちに、試料の採取に用いる。
- 真空方式ガス採取器で採取した空気を検知管に通す。
問204:2, 4
問205:2, 3
問206:3
問207:3, 4
解 説
問204
選択肢 1,5 ですが
ガラス電極は「指示電極」に用いられます。参照電極に用いられるのは「銀/塩化銀 電極」などです。参照電極の内部液には、飽和 KCl や飽和 NaCl が用いられます。選択肢 1,5 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
ネルンストの式 (Nernst の式) は、電極の平衡電位とイオン濃度の関係を表現する式です。
選択肢 3 ですが
pH は温度の影響を受けます。「測定される pH は温度の影響を受けない」わけではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
校正された電位が基準です。
以上より、問 204 の正解は 2,4 です。
参考 Nernst の式
https://yaku-tik.com/yakugaku/bk-3-3-4/
問205
選択肢 1 ですが
pH や残留塩素を測定する目的は、安全な環境で使用者がプールを使うためです。従って、プール使用「前」に確認しなければ意味がないと判断できるのではないでしょうか。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
学校環境衛生基準により定められています。
選択肢 3 は妥当です。
ちなみに、遊離残留塩素は「HClO (次亜塩素酸)、ClO– (次亜塩素酸イオン) の総称」です。
選択肢 4 ですが
入泳者が持ち込んだ汚れ等を消毒する役割を担うのが遊離残留塩素成分なので、遊離残留塩素は消費されて濃度が「低く」なります。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
pH が低いほど、HClO の割合が多くなります。そして、消毒効果は HClO の方が高いです。従って、pH が低い → HClO 多い → 消毒効果高い です。「pH の値によらず塩素剤の消毒効果は変わらない」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 205 の正解は 2,3 です。
類題 109-242243
https://yaku-tik.com/yakugaku/109-242/
問206
凝集剤といえば、硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムです。選択肢 3 or 6 が正解と考えられます。
選択肢 6 ですが
身近な消毒剤と凝集剤を混ぜてクロロホルム (CHCl3) が簡単にできるというのは、炭素がどこから来たかわからない反応である点であることからも、違和感を覚えるのではないでしょうか。選択肢 6 は誤りです。
以上より、問 206 の正解は 3 です。
類題 105-137
https://yaku-tik.com/yakugaku/105-137/
問207
選択肢 1,2,5 を誤りと判断したい問題です。
選択肢 1 ですが
使用前 1 時間弱程度、使用環境に放置して常温に戻します。「取り出したら直ちに使用することができる」わけではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
再利用は原則できません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は妥当です。
選択肢 5 ですが
一回使ったことがないとピンとこないと思います。使用経験がない人は一度「検知管 塩素」などのキーワードで使用説明動画を見つけてちらっと見ておくとよいです。
検知管をガス採取器に付けて、ガス採取器ハンドルを引くことにより、ピストンの原理でガス検知管内に測定したいガスを通気させます。「採取器で採取した空気を検知管に通す」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 207 の正解は 3,4 です。

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