薬剤師国家試験 第110回 問200-201 過去問解説

 問 題     

45 歳女性。慢性的に片頭痛を繰り返しており、現在、処方 1 及び 2 の薬剤を服用している。

病院再診時、患者の片頭痛日誌を確認したところ、月 4 回以上通勤できないほどの片頭痛発作があった。医師は処方 2 の薬剤を変更するため、病院薬剤師に薬剤の選択について意見を求めた。

問200

薬剤師が提案する変更後の処方薬として適切なのはどれか。2 つ選べ。

  1. セレコキシブ
  2. ガルカネズマブ
  3. エルゴタミン
  4. ロメリジン塩酸塩
  5. ロキソプロフェンナトリウム

問201

スマトリプタンはセロトニン (5-HT) 受容体のアゴニストとして薬効を発揮するが、受容体のサブタイプによって結合の強さが異なる。3H 標識した 5-HT を用いた結合実験により、スマトリプタンはヒト5-HT 受容体のうち 5-HT1D 受容体と最も強く結合することがわかっている。

スマトリプタンが結合していない 5-HT1D 受容体を R、スマトリプタンの遊離形を S、スマトリプタンと 5-HT1D 受容体の結合形を RS とし、R と S は次のように 1:1 で反応するものとする。

スマトリプタンの総濃度 ([S]+[RS]) と 5-HT1D 受容体の総濃度 ([R]+[RS]) がともに 100 nmol/L であるとき、5-HT1D 受容体のうちスマトリプタンが結合した割合が 0.80 とすると、この反応の解離定数 Kd に最も近いのはどれか。1 つ選べ。

  1. 0.20 nmol/L
  2. 0.80 nmol/L
  3. 5.0 nmol/L
  4. 80 nmol/L
  5. 100 nmol/L

 

 

 

 

 

正解.
問200:2, 4
問201:3

 解 説     

問200

片頭痛治療薬は「発作時」に対する急性期治療薬と「発作予防」のための薬に大別されます。NSAIDs や トリプタン製剤は急性期治療薬です。

予防治療薬として、抗てんかん薬、β 遮断薬、Ca 拮抗薬などに加え、近年 CGRP や CGRP 受容体に対するモノクローナル抗体が選択肢に増えています。


選択肢 1,5 ですが

NSAIDs は急性期治療薬です。発作予防目的であったバルプロ酸の変更として不適切です。選択肢 1,5 は誤りです。


選択肢 2 は適切です。

ガルカネズマブは、ヒト化抗 CGRP モノクローナル抗体製剤です。


選択肢 3 ですが

エルゴタミンは、トリプタン製剤以前によく用いられていた急性期治療薬です。バルプロ酸の変更としては不適切と考えられます。選択肢 3 は誤りです。


選択肢 4 は適切です。

ロメリジンは、脳血管選択的 Ca 拮抗薬です。血圧降下作用はほぼ示さないという特徴があります。片頭痛の予防治療薬として用いられます。


以上より、問 200 の正解は 2,4 です。

類題 106-250251
https://yaku-tik.com/yakugaku/106-250/

問201

【解離定数 Kd の分母分子について】
解離定数は、結合定数の逆数です。結合定数であれば、[RS]/[R][S] ですが、これだと単位が nmol/L-1 となります。選択肢の単位が nmol/L であることからもわかるのですが、解離定数 Kd を考える際、分母 [RS]、分子 [R] [S] である点に注意が必要です。


【受容体の濃度について】
受容体の総濃度が 100 nmol/L で、そのうち スマトリプタンが結合している割合が 0.80 なので、[RS] = 100 × 0.8 = 80 nmol/L です。すると、残りの 100 – 80 = 20 nmol/L が [R] とわかります。


【スマトリプタンの濃度について】

スマトリプタンの総濃度が 100 nmol/L で、[RS] = 80 nmol/L とわかったので、[S] = 100 – 80 = 20 nmol/L です。


【解離定数 Kd の計算】
Kd = [R][S]/[RS] = (20 × 20)/80 = 5 です。


以上より、問 201 の正解は 3 です。

類題 102-95
https://yaku-tik.com/yakugaku/102-095/

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