薬剤師国家試験 第110回 問107 過去問解説

 問 題     

下図は、インスリンの構造を模式的に示している。図中の ○ はアミノ酸残基を示し、特徴のあるアミノ酸残基を 3 文字表記している。

近年、インスリンの化学構造を部分的に改変することで、治療目的に沿った血糖降下作用を発揮するインスリンアナログ製剤 (1 ~ 5) が開発されている。

このうち、構造改変によりインスリンの等電点 (pI 約 5.4) を中性付近 (pI 約 6.7) に近づけることにより、生理的 pH で等電点沈殿を起こし、皮下で徐々に溶解、吸収され、1 日 1 回の皮下投与で安定した血糖降下作用を示すのはどれか。1 つ選べ。

なお、各アナログ製剤の構造はインスリンと同様な方法で図示しており、図中の(灰色の丸)はインスリンと異なるアミノ酸残基を示す。

 

 

 

 

 

正解.2

 解 説     

本問は、知らなければ捨て問と考えて良い印象です。

本番における考え方の一例としては
「問題文から pI 5.4 → pI 6.7 と等電点がまぁ大きく変わっている」
→「等電点とは、正の荷電と負の荷電が等しくなる pH のこと」だから「A 鎖、B 鎖の末端のどこかを違うアミノ酸に変えてるんじゃないのか

→ 末端に変化があるのが選択肢 2,4 のみ
→ 選択肢 4 は COOH いっぱいついてるから、pI 小さくなるのでは?

従って、多分 2。といった流れで 選択肢 2 として選び、これ以上考えてもしょうがなさそうと悩みすぎず、次の問題へ行けると良いです。

※本問では偶然この考え方で正解ですが、他のインスリンアナログも大体等電点は 6.7 ~ 7 ぐらいが多いです。この考え方で正解であることは、偶然です。

※正解を選ぶことよりも「確実な基礎知識から推論してみて、2択や3択ぐらいまで自分なりに絞り、それ以上浮かばなければ次の問題へ」という時間の使い方をできたかどうかの方が重要だと思います。


インスリンアナログについて構造や特徴を覚えていた場合は、以下の通りです。

問題文の特徴を有するインスリンアナログは、インスリングラルギンです。インスリングラルギンは、インスリンの B 鎖の C 末端にアルギニンを二つ付加し、A 鎖の 21 番目のアスパラギンをグリシンに置換したインスリンアナログ製剤です。従って、選択肢 2 が正解、という流れになります。

 

※インスリンアナログ製剤について、すごく余裕がある人は、過去問頻出の薬についてにまずは絞って少しずつ関連知識を覚えていってもよいかもしれません。ですがそこまで試験における得点力という観点からは、効率良くない認識です。深入りは避けること推奨です。


以上より、正解は 2 です。

類題 国家総合職 化学・生物・薬学 H28 no54
https://yaku-tik.com/yakugaku/km-28-54/

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