問 題
73 歳女性。左前頭部が柔らかく腫張しているのを自覚し、かかりつけ医を受診した。腫瘤性病変を指摘され、精査加療目的で紹介入院となった。CT 検査で頭蓋及び四肢に骨病変が認められた。
骨髄検査の結果、単クローン性の形質細胞が 37.0 % であったことから多発性骨髄腫と診断され、以下の DLd (ダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン) 療法が開始された。
問252
今回の薬物治療における薬剤管理として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- ダラツムマブの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性流通管理システムへの薬剤師の登録が必要である。
- レナリドミドの使用にあたっては、製造販売業者が策定した適性管理手順に従って、調剤及び管理上の責任を担う、責任薬剤師の登録が必要である。
- ダラツムマブを使用する前に、肝炎ウイルス感染の有無を確認する必要がある。
- レナリドミドは、服用しやすいように脱カプセルする必要がある。
- デキサメタゾンは、帳簿への記載が必要である。
問253
治療開始後、血清カルシウム値が 12 mg/dL を超えたため、薬物を追加することとなった。追加する薬物の作用機序として、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 骨芽細胞の副甲状腺ホルモン受容体を遮断する。
- 副甲状腺細胞のカルシウム受容体を遮断する。
- 破骨細胞のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害する。
- 骨芽細胞の RANKL (NF-κB 活性化受容体リガンド) の作用を阻害する。
- 小腸上皮細胞のビタミン D 受容体を活性化する。
正解.
問252:2, 3
問253:3, 4
解 説
問252
選択肢 1 ですが
本試験時点で適性流通管理システム登録が必要である薬は、ADHD 治療薬のコンサータとビバンセです。ダラツムマブの使用にあたっては不要です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
レナリドミドはサリドマイド誘導体です。ヒトに対する催奇形性を示しうる薬剤のため、適正管理手順に従い、厳格な薬剤配布プログラムの下で患者に提供されます。
選択肢 3 は妥当です。
B 型肝炎ウイルス 再活性化を避けるために、感染の有無を確認する必要があります。
選択肢 4 ですが
薬剤に曝露しないよう、絶対に脱カプセルしてはいけません。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
デキサメタゾンはステロイドです。帳簿への記載は特に必要ありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 252 の正解は 2,3 です。
問253
多発性骨髄腫に伴う高カルシウム血症なので、破骨細胞による骨破壊が亢進していると考えられます。従って、破骨細胞を抑制するビスホスホネートの作用機序を選べばよいです。ビスホスホネートはメバロン酸経路のファルネシル二リン酸合成酵素を阻害します。
また、RANKL (receptor activator of NF-κB ligand) は破骨細胞の形成、機能などを調節するタンパク質です。そのため、RANKL 阻害も妥当です。
以上より、問 253 の正解は 3,4 です。
参考 骨粗しょう症の病態生理、治療薬、注意点
https://yaku-tik.com/yakugaku/bt-4-4-2/
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