問 題
ある市立中学校で、線状降水帯による大雨のため床下浸水の被害が発生し、休校となった。この学校では、市から供給される水道水のみを水源とし、地下の受水槽に一旦貯めたのちに、高置水槽に揚水して給水栓に飲料水を供給している。
学校を再開するにあたり、臨時検査として給水栓の飲料水の水質を検査することになり、学校薬剤師が以下の項目について検査を行った。
検査項目:一般細菌、大腸菌、塩化物イオン、全有機炭素 (TOC) の量、pH 値、味、臭気、色度、濁度及び遊離残留塩素
下表は学校薬剤師が採水時に測定した項目及び検査機関で測定した項目の検査結果である。直近の定期検査は災害の 2 ケ月前に実施したものである。
問242
検査を行った項目のうち、次の試薬 A ~ C を用いる項目の組合せとして正しいのはどれか。1 つ選べ。
- 試薬A 試薬B 試薬C
- 大腸菌 一般細菌 pH 値
- 遊離残留塩素 一般細菌 塩化物イオン
- 塩化物イオン 大腸菌 pH 値
- 遊離残留塩素 大腸菌 塩化物イオン
- 大腸菌 pH 値 遊離残留塩素
問243
この検査結果から、薬剤師が学校に報告する内容として適切なのはどれか。2 つ選べ。
- 臨時検査において一般細菌が検出されていることから、地下の受水槽に汚染された雨水などが流入したおそれがある。
- 塩化物イオン濃度と大腸菌の検査結果から、地下の受水槽がし尿で汚染されたおそれがある。
- 定期検査及び臨時検査のいずれにおいても TOC が検出されていることから、災害の前から高置水槽で藻類による汚染が発生していたと考えられる。
- 定期検査の結果と比較して、臨時検査では pH 値が低下しているため、遊離残留塩素の消毒効果が減弱したと考えられる。
- 臨時検査において遊離残留塩素が学校環境衛生基準を満たしていないため、飲料に適さない。
正解.
問242:4
問243:1, 5
解 説
問242
試薬 A は
ジエチル – p – フェニレンジアミン (DPD) です。DPD 法で検査するのは「遊離残留塩素」です。正解は 2 or 4 です。
試薬 B は
MUG (4-メチルウンベリフェリル- β – D – グルクロニド) です。大腸菌の存在下で、β – グルクロニダーゼによって分解され、4 – メチルウンベリフェロンが遊離し培地に紫外線を当てると青色の蛍光を発します。試薬 B で検査するのは「大腸菌」です。
試薬 C は
硝酸銀です。硝酸銀滴定法 (モール法) による塩化物イオンの検査に用いられます。
以上より、問 242 の正解は 4 です。
類題
100-136 大腸菌の検査法
https://yaku-tik.com/yakugaku/100-136/
103-137 DPD 法
https://yaku-tik.com/yakugaku/103-137/
問243
選択肢 1 は妥当です。
直近では不検出だった一般細菌項目から、妥当な報告内容と考えられます。
選択肢 2 ですが
大腸菌汚染は臨時検査において不検出です。し尿汚染があったのであれば、臨時検査において検出されると推測されます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
本試験時点において、水道水の水質基準 における TOC の基準値は 3 mg/L 以下です。基準値以内であり、汚染発生はしていないと考えられます。※TOC の基準値範囲について、過去問での出題傾向もふまえると、覚えておく必要はありません。
本選択肢についての判断の仕方としては「TOC が仮に直近も基準値を超えていた」としても「原因が藻類による汚染」と考える理由が見当たらない として誤りだろうと判断できます。
選択肢 4 ですが
遊離残留塩素は、HClO (次亜塩素酸)、ClO– (次亜塩素酸イオン) の総称です。pH が低いほど、HClO の割合が多くなります。そして、消毒効果は HClO の方が高いです。従って、pH が低い → HClO 多い → 消毒効果高い です。「pH 値が低下しているため、遊離残留塩素の消毒効果が減弱した」という記述は不適切です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
遊離残留塩素の基準は、0.1mg/L 以上です。
以上より、問 243 の正解は 1,5 です。
類題 106-244245
https://yaku-tik.com/yakugaku/106-244/
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