問 題
抗悪性腫瘍薬であるイリノテカンはプロドラッグである。この薬物の製剤と代謝に関する以下の問に答えよ。
問177
イリノテカン塩酸塩水和物を有効成分とするオニバイド点滴静注に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。なお、本製剤は以下の添加物を含む。
添加物
1,2 – ジステアロイル – sn – グリセロ – 3 – ホスホコリン、コレステロール、N – (カルボニル – メトキシポリエチレングリコール – 2000) – 1,2 – ジステアロイル – sn – グリセロ – 3 – ホスホエタノールアミンナトリウム塩、4 – (2 – ヒドロキシエチル) – 1 – ピペラジンエタンスルホン酸
- イリノテカンをポリエチレングリコール誘導体で可溶化した製剤である。
- ポリエチレングリコールで表面が修飾されたリポソーム製剤である。
- 能動的ターゲティングにより腫瘍に集積する。
- 細網内皮系を回避することにより血中に滞留する。
- 製剤中に含まれる微粒子は 150 μm 程度である。
問178
イリノテカンは酵素 (ア) によって活性代謝物 (イ) に変換され、さらに酵素 (ウ) によって代謝物 (エ) に変換され不活化される。
(ア) の酵素及び (イ) の構造式、(ウ) の酵素及び (エ) の構造式のそれぞれの組合せとして、正しいのはどれか。1 つ選べ。
正解.
問177:2, 4
問178:3
解 説
問177
選択肢 2,4 が正しいと判断するのは難しいと思われます。選択肢 1,3,5 を誤りと判断できるとよい問題です。
選択肢 1 ですが
ポリエチレングリコールを結合させることを PEG 化といいます。目的は、水溶性の向上、血中濃度の維持(糸球体ろ過の抑制 など)、抗原性の低下、タンパク質分解酵素に対する安定性向上などです。また、PEG 化により血中濃度が維持され全身に長く存在するようになる、というのが大きなメリットです。
イリノテカンについては過去問にも繰り返し出題されており、わざわざ PEG 化して可溶化しなければいけないとは考えづらいです。目的があるとすれば、血中濃度維持と考えられます。従って、選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
選択肢 3 ですが
リポソーム化して腫瘍集積するのは、受動的ターゲティングです。「能動的」ターゲティングではありません。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
選択肢 5 ですが
リポソームの粒子径は、直径およそ 100 nm です。150 μm = 150000 nm なので、大きすぎます。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 177 の正解は 2,4 です。
参考 ターゲティングの概要と意義
https://yaku-tik.com/yakugaku/sz-3-3-1/
問178
イリノテカンは、カルボキシルエステラーゼにより活性代謝物 SN-38 に変換され、UDP – グルクロン酸転移酵素により、グルクロン酸抱合を受けて不活性化します。グルクロン酸が糖誘導体の一種であることから、各分子の左端部分に注目することで、グルクロン酸抱合を受けた構造が B と判断できるのではないでしょうか。
以上より、問 178 の正解は 3 です。
類題 101-190
https://yaku-tik.com/yakugaku/101-190/
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