問 題
ある化合物が医薬品として適合するかどうかの判定は、分離分析、定性分析及び定量分析を駆使して行われる。次の記述は、日本薬局方 L – アラニン (C3H7NO2:89.09) の純度試験 (一部要約) 及び定量法である。
純度試験
試料溶液及び標準溶液 20 μL ずつを正確にとり、次の条件で液体クロマトグラフィーにより試験を行う。試料溶液及び標準溶液から得たピーク高さから試料溶液 1 mL に含まれるアラニン以外のアミノ酸の質量を求め、その質量百分率を算出するとき、アラニン以外の各アミノ酸の量は 0.1 % 以下である。
試験条件
- 検出器:可視吸光光度計(測定波長:570 nm)
- カラム:内径 4.6 mm、長さ 8 cmのステンレス管に 3 μm のポリスチレンにスルホン酸基を結合した液体クロマトグラフィー用強酸性イオン交換樹脂 (Na型) を充塡する。
- ~(中略)~
- 移動相:移動相 A から E の順に切り換える。
- 反応試薬:ニンヒドリンを含む溶液
- ~(以下略)~
定量法
本品を乾燥し、その約 90 mg を精密に量り、ギ酸 3 mL に溶かし、酢酸(100) 50 mL を加え、0.1 mol/L 過塩素酸で滴定する (電位差滴定法)。同様の方法で空試験を行い、補正する。
0.1mol/L 過塩素酸 1 mL = ( ア ) mg C3H7NO2
問97
純度試験に用いた液体クロマトグラフィー(LC)に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 一般に、この検出器の光源にはタングステンランプが用いられる。
- 固定相は陰イオン交換体である。
- 移動相は A から E の順に、pH が大きくなる。
- この LC は、プレカラム誘導体化法である。
- アラニンとプロリンは同じ呈色物質を生成する。
問98
定量法に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 試料 95.67 mg を量り取った場合、「約 90 mg」を量り取ったことにならない。
- L-アラニンはアセチル化された後、過塩素酸と反応する。
- この電位差滴定法では、指示電極にガラス電極を用いる。
- 本試験より空試験の方が、0.1 mol/L過塩素酸の滴加量は少ない。
- ( ア )に入る数値は 4.455 である。
正解.
問97:1, 3
問98:3, 4
解 説
問97
選択肢 1 は妥当です。
可視部の光源には、タングステンランプや、ハロゲンタングステンランプが用いられます。
選択肢 2 ですが
スルホン酸基(-SO3H)を交換基として持つ樹脂なので「陽イオン交換樹脂」です。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
陽イオン交換なので、まずは pH が低い状態でアミノ酸を陽イオンにしておき、吸着させます。その後、pH をだんだん大きくしていくことで、酸性アミノ酸 → 中性アミノ酸 → 塩基性アミノ酸 の順に 等電点となり、吸着できなくなって、移動相に乗って流れて行き、ピークとして現れる という流れです。
選択肢 4 ですが
クロマトグラフィーで分離してからニンヒドリンを含む溶液で誘導化しているのだから、ポストカラム誘導体化法です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
ニンヒドリンにより、通常は紫に呈色されるのですが、プロリンのみ窒素原子が水素を1個しかもたないため、ニンヒドリン1分子としか反応しません。(参考 生化学まとめ アミノ酸の定性および定量試験法)。その反応の生成物は、黄色を示します。「同じ呈色物質」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 97 の正解は 1,3 です。
問98
選択肢 1 ですが
「約」は ± 10 % です。約 90mg とは、81 ~ 99mg のことです。従って、試料 95.67mg は、約 90mg です。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
まず、酢酸(100) とあるので、定量で加えたのは 100% 酢酸です。非水滴定の溶媒です。このため、別に酢酸がアラニンと反応するわけではありません。従って「アセチル化」された後・・・ではありません。選択肢 2 は誤りです。※ 無水酢酸との反応と混同しないように注意が必要です。
選択肢 3,4 は妥当です。
選択肢 5 ですが
過塩素酸 HClO4 1分子で H 1 個が反応します。アラニン 1 分子で -NH2 が1個反応します。従って、過塩素酸とアラニンは、1:1で反応します。
0.1 mol/L 過塩素酸 1mL は、0.1m mol です。0.1m mol の アラニンは 8.909 mg です。従って ア に入る数値は 8.909 です。「4.455」ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
類題 98-203 ブロムヘキシン塩酸塩の定量法
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