問 題
55歳男性。2型糖尿病。内服薬による血糖のコントロールが不良のため、インスリン導入の目的で教育入院を行い、超速効型インスリンの投与が開始された。
しかし退院後、仕事が多忙のため自己注射が不規則になった。現状の改善が図れないことから、かかりつけ薬剤師が処方医にトレーシングレポートを書き、使用製剤の見直しについて処方提案を行った。
その結果、次回来局時には以下のように変更された処方箋を持参した。
問276
生活の状況を考慮して処方変更となった患者への説明として、適切なのはどれか。1つ選べ。
- 以前処方されていた超速効型インスリンも併用する。
- 注射をする前に、十分に転倒混和して懸濁させる。
- 注射を忘れた日は、空腹時でも注射する。
- 風邪に伴う発熱や悪寒が現われても自己判断で中止しない。
- 血糖値に応じて適宜注入単位を調整する。
問277
図は、皮下投与後のインスリンアナログの動態を示している。インスリンアナログの動態に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- 本製剤中で、インスリンデグルデクは、難水溶性で安定なダイヘキサマーとして存在する。
- 本製剤中で、インスリンアスパルト及びインスリンデグルデクは、アルブミンと結合し安定化されている。
- 本製剤を皮下投与後、インスリンアスパルトのヘキサマーは、皮下組織において速やかにモノマーに解離する。
- 本製剤を皮下投与後、インスリンデグルデクのダイヘキサマーは、皮下組織でマルチヘキサマーを形成した後、徐々にモノマーに解離する。
- インスリンアスパルトは、循環血中でアルブミンに強く結合し、標的組織に移行する。
正解.
問276:4
問277:3, 4
解 説
問276
自覚症状がなかったり、少なかったりする病気において、服薬コンプライアンスが悪くなるというのは、薬剤師として念頭に置いておきたいことです。ちなみに、トレーシングレポートは、聞き取った情報を医師と共有するために作成する文書です。(106-90)。
ライゾデグは、超速効型インスリン(インスリン アスパルト)と持効型インスリン(インスリン デグルデク)を3:7のモル比で含有する溶解インスリン製剤です。インスリンデグルデクについて、105-161 も確認しましょう。
選択肢 1 ですが
併用しません。残薬が家などにありえるため、しっかりと指導しなければならない点です。併用すると、副作用として低血糖のおそれがあります。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
懸濁材ではないので、特に転倒混和の必要はありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 ですが
低血糖を避けるため、朝食直前です。忘れた場合は、翌日から再開します。空腹時に注射してしまうと、低血糖のおそれがあります。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 は妥当です。
体調不良などの場合、すぐに連絡をしてもらい、血糖コントロール状態を確認することが優先されます。(類題 104-294295)。
選択肢 5 ですが
1回12単位という用量で用います。適宜調整する薬剤ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 276 の正解は 4 です。
問277
選択肢 1 ですが
製剤中でダイヘキサマーとして存在するのですが、難溶性ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
仮に製剤中においてアルブミンと結合しているのであれば、皮下組織においてアルブミンが描かれると考えられます。しかし、アルブミンが描かれているのが循環血中だけなので、図から誤りと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は妥当です。
図の通りの記述です。バームクーヘン型のユニットで描かれている左側が、インスリンアスパルト、五角形のユニットで描かれている右側が、インスリンデグルデクです。
選択肢 5 ですが
図において、循環血中でアルブミンに強く結合しているのは、インスリンデグルデクです。インスリンアスパルトではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 277 の正解は 3,4 です。
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