問 題
64歳女性。8年前に朝の手指のこわばり、多関節痛が出現し、近医にて関節リウマチと診断された。メトトレキサート(6mg/週)でコントロールされていたが、1ヶ月前より関節症状が悪化したため入院した。
入院時検査では、腫脹関節10ヶ所、圧痛関節6ヶ所、赤血球沈降速度 112 mm/h、CRP 8.5 mg/dLであったことから疾患活動性が高いと判断され、インフリキシマブ (3mg/kg) を併用することになった。
なお、体温 37.2℃、血圧 94/58 mmHg、脈拍数 80 拍/分、ALT 80 IU/L、AST 88 IU/Lであった。
問250
この患者の治療における薬剤師の対応として、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 入院時検査で軽度肝機能障害が認められるので、ホリナートカルシウム錠の投与を医師に提案した。
- この患者のB型肝炎ウイルス感染の有無を確認した。
- この患者の結核の既往の有無を確認した。
- インフリキシマブ投与によりinfusion reactionが認められた場合は、メトトレキサートの増量が必要と医師に情報提供した。
- 咳や喉の痛み等風邪の症状が出た場合は、すぐに医師、看護師、薬剤師等に連絡するように患者に伝えた。
問251
メトトレキサートとインフリキシマブを投与した場合、この患者で期待される効果の機序はどれか。2 つ選べ。
- TNF-α の作用が阻害され、関節滑膜細胞の増殖が抑制される。
- ジヒドロ葉酸還元酵素の阻害によりリンパ球の増殖が抑制され、中和抗体の産生が抑制される。
- シクロオキシゲナーゼの阻害によりプロスタグランジン合成が抑制され、疼痛が緩和される。
- IL-6 受容体が遮断され、破骨細胞の分化が抑制される。
- 炎症局所のアデノシン受容体が遮断され、炎症反応が抑制される。
正解.
問250:4
問251:1, 2
解 説
問250
選択肢 1 は妥当です。
ホリナートカルシウム(ロイコボリン)は、フルオロウラシルの作用増強に用いられます。他にも、副作用軽減の目的でメトトレキサートとの服用の場合に用いられます。(100-65)。
選択肢 2,3,5 は妥当です。
インフリキシマブの投与に伴い、感染等に注意が必要です。結核、敗血症等に特に注意が必要な薬剤であることを共有することが適切と考えられます。ちなみに、投与に先立ち結核感染等を確認しますが、結核既感染者であった場合は、抗結核薬を投与した上での本剤投与となります。また、生ワクチン摂取をさけます。さらに、B 型肝炎ウイルスの再活性化が知られており、注意が必要です。(104-288289)。
選択肢 4 ですが
インフュージョンリアクションとは、薬剤投与中~投与開始後 24 時間以内に現れる症状の総称です。予防としては、抗ヒスタミン薬や、解熱鎮痛薬を投与します。(98-302)。「infusion reactionが認められた場合、メトトレキサートの増量」ではありません。選択肢 4 は誤りです。
以上より、問 250 の正解は 4 です。
問251
選択肢 1 は妥当です。
インフリキシマブ(レミケード)の作用機序です。
選択肢 2 は妥当です。
メトトレキサートの作用機序です。(100-163 選択肢 5)。
選択肢 3 ですが
NSAIDs の作用機序です。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
トシリズマブ(アクテムラ)の作用機序です。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 ですが
メトトレキサートの作用機序が「炎症局所のアデノシン濃度を上昇させて、アデノシン受容体を介して抗炎症効果を示す」です。「アデノシン受容体が遮断され、炎症反応が抑制される」わけではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 251 の正解は 1,2 です。
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