薬剤師国家試験 第107回 問204-207 過去問解説

 問 題     

50歳男性。高血圧の治療のため、近隣の内科クリニックに通院中である。喫煙歴30年(1日40本)。かかりつけ薬剤師に患者から電話相談があり、「昨日、晴天の中ゴルフに出かけたところ、衣服から露出した部分が赤く日焼けのようになった」と相談があった。

薬剤師が薬剤服用歴を確認したところ、光線過敏症の可能性が疑われたので、皮膚科受診を勧めた。

問204

皮膚症状の原因として、考えられる薬剤はどれか。2つ選べ。

  1. テモカプリル塩酸塩錠
  2. ヒドロクロロチアジド錠
  3. ゾルピデム酒石酸塩錠
  4. モサプリドクエン酸塩錠
  5. ケトプロフェンテープ

問205

前述の患者が皮膚科を受診し、光線過敏症の診断を受け、以下の処方箋を持って薬局を訪れた。

皮膚科から処方された噴霧剤に関する説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 炎症に伴う発赤、腫れ、かゆみなどの症状を改善します。
  2. 患部に水疱ができている場合は使用しないでください。
  3. 患部に傷がある場合でも使用できます。
  4. 目の周りの症状にも使用できます。
  5. たばこなどの火気を避けて使用してください。

問206

光線過敏症は、体表面に近い部分に分布した薬物が電磁波を吸収することにより誘発される。光線過敏症を誘発する電磁波に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. キセノンランプが放射する光に含まれる。
  2. 原子核のスピン遷移に伴い吸収・放射される。
  3. 水分子の回転運動を直接引き起こす。
  4. SPECTやPETに利用される。
  5. n-π*遷移やr-π*遷移を引き起こす。

問207

薬剤師は患者に対し、今後の対応として日焼け止め剤の利用を勧めることにした。日焼け止め剤に含まれている化合物のうち、光線過敏症の発症に予防的に機能することが期待されるものとして、適切でないのはどれか。1つ選べ。

 

 

 

 

 

正解.
問204:2, 5
問205:1, 5

問206:1, 5
問207:
4

 解 説     

問204

光線過敏症といえば、モーラステープを連想するのではないでしょうか。本問での処方内容を見ると、ケトプロフェンテープが皮膚症状の原因として考えられます。

そして、本試験時点において、降圧薬における配合剤の増加に伴い、チアジド系利尿薬に起因する光線過敏症が増加しています。ヒドロクロロチアジドも、皮膚症状の原因として考えられます。

以上より、正解は 2,5 です。

問205

選択肢 1 は妥当です。
フルオシノニドは、2 群(very strong)に分類される ステロイドです。炎症 及び 炎症に伴う症状を抑えるために処方されていると考えられます。

選択肢 2 ですが

選択肢 3,4 ですが
傷にステロイドを使用すると、修復の遅れや細菌感染リスク上昇が懸念されます。また、目の周りに使うと眼圧亢進のおそれがあります。選択肢 3,4 は誤りです。

選択肢 5 は妥当です。
可燃性があるため、火気を避けて使用します。

以上より、正解は 1,5 です。

問206

選択肢 1 は妥当です。

選択肢 2 ですが
原子核のスピンに伴い吸収・放射されるのは、NMR 測定に用いられる ラジオ波です。日光に当って生じる光線過敏症を誘発する電磁波とは関係ないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 ですが
水分子の「回転運動」を直接引き起こすということなので、マイクロ波が対応すると考えられます。(物理化学まとめ 分子の振動、回転、電子遷移)。マイクロ波は、電子レンジなどに用いられる電磁波の一種です。日光に当って生じる光線過敏症を誘発する電磁波とは関係ないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 ですが
SPECT や PET に利用されるのは、γ 線です。光線過敏症とは関係ないと考えられます。

選択肢 5 は妥当です。

以上より、問 206 の正解は 1,5 です。

問207

光を吸収 しそうな構造 といえば、共役二重結合です。この観点から選択肢の構造を見ると、選択肢 4 が不適切と考えられます。

以上より、問 207 の正解は 4 です。

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