薬剤師国家試験 第107回 問174 過去問解説

 問 題     

薬物の血中濃度 (C) の経時変化が下図のようになったため、体循環コンパートメントと末梢コンパートメントからなる線形 2 – コンパートメントモデルで解析し、次の式の形で表した。

ただし、A、B、α、β は定数、t は時間であり、投与量を D とする。このときの薬物動態パラメータに関する記述のうち、正しいのはどれか。2 つ選べ。

  1. 終末相 (β相) における消失速度定数 (β) は、図の ② の部分の傾きから求められる。
  2. 分布相 (α相) における消失速度定数 (α) は、図の ① の部分の傾きから求められる。
  3. 血中濃度時間曲線下面積は、(A+B)/(α+β) で表すことができる。
  4. 投与直後の薬物血中濃度は A+B で表すことができる。
  5. 体循環コンパートメントの分布容積は D/A で表すことができる。

 

 

 

 

 

正解.1, 4

 解 説     

選択肢 1,2 ですが
① の部分では、薬物が分布もしているし、消失もしています。そのため、この部分から「分布相のみ」の情報は、簡単にはわかりません。

一方、② の部分では
分布が平衡状態に達し、2ーコンパートメントではなく、1ーコンパートメントとみなせます。式で言うと、C ≒ Be-βt で近似できます。さらにグラフ用紙が片対数グラフです。従って、直線部分の傾きから、消失速度定数 β を計算できます。

選択肢 1 は誤りです。選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3 ですが
血中濃度時間曲線下面積は A/α + B/β です。これは覚えておくか、計算で求めることができるようにしておきましょう。計算過程は、以下の通りです。

AUC は A/α + B/β です。(A+B)/(α+β) ではありません。選択肢 3 は誤りです。

選択肢 4 は妥当です。
式に、t = 0 を代入すれば求めることができます。

選択肢 5 ですが
分布容積は、D/C0 です。投与直後の血中濃度 C0 = A+B なので、分布容積は D/(A+B) です。D/A ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,4 です。 

参考 薬剤学まとめ 線形 2 -コンパートメントモデル

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