107回薬剤師国家試験 問159-160解説

 問 題     

60 歳男性。基礎疾患を指摘されたことはない。1 週間前から 1 日に数回めまいを感じるようになった。今朝、強いめまいとふらつきを覚え、救急外来を受診した。

来院時の血圧は 118/84 mmHg、脈拍数 32 回/分であった。心電図では P 波と QRS 波が全く無関係に出現し、PP 間隔と RR 間隔がそれぞれ一定で、PR 間隔は不規則であった。また、P 波より QRS 波の出現頻度が少なかった。

問159

この患者の初期治療に適切な薬物はどれか。2つ選べ。

  1. アミオダロン
  2. ニトログリセリン
  3. ランジオロール
  4. アトロピン
  5. イソプレナリン

問160

抗不整脈薬に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. ニフェカラントは、Kチャネルを遮断して、心筋の活動電位の持続時間を延長する。
  2. ピルシカイニドは、アドレナリン β1 受容体を遮断して、不応期を延長する。
  3. ベラパミルは、Ca2チャネルを遮断して、房室伝導速度を低下させる。
  4. プロカインアミドは、Naチャネル及び Kチャネルを遮断して、心電図の QT 間隔を短縮する。
  5. ジルチアゼムは、Naチャネルを遮断して、心筋の活動電位の立ち上がり (第0相) を抑制する。

 

 

 

 

 

正解.
問159:4, 5
問160:1, 3

 解 説     

問159

脈拍数 32 回/分 に注目し、徐脈と判断します。(脈拍の正常値は 60 ~ 100 回/分 ぐらいです)。心電図に関してはわからなくて大丈夫です。

徐脈性不整脈に対する薬物治療として
アトロピンイソプレナリンが用いられます。無効な場合、ペースメーカーの適用が考慮されます。(参考 薬理学まとめ 不整脈の病態生理、治療薬、注意点)。

以上より、正解は 4,5 です。

ーーー心電図について 補足ーーー
薬剤師国家試験 合格のために 本試験時点では不要。 
国試をきっかけとして 余裕があれば勉強してもよいと思われます。

PP 間隔、RR間隔が一定 なので
心房と 心室 が それぞれ勝手に動いている 
→ 「完全房室ブロック」と考えられます。

心臓の刺激伝導系の スタート地点である 洞結節 → 心房 までが 動いているが、心房 → 心室 へ刺激が伝導していない状態です。この時、心室には 最低限勝手に動く自動能があります。具体的には、刺激伝導系を構成し、勝手に動く特殊心筋の一種である プルキンエ繊維が 収縮を支配します。

イメージとしては
停電になった時、ずっと電気が使えないのは困るため、補助電源を使うイメージです。

ーーー心電図について 補足 終わりーーー

問160

選択肢 1 は妥当です。
ニフェカラントは、クラス III 群の抗不整脈薬です。

選択肢 2 ですが
ピルシカイニドは、クラス I 薬です。Na+ チャネル遮断作用により活動電位の立ち上がりを遅くすることで抗不整脈薬として働きます。「アドレナリン β1 受容体遮断」ではありません。選択肢 2 は誤りです。

選択肢 3 は妥当です。
ベラパミルは Ca 拮抗薬です。(102-31)。

選択肢 4 ですが
プロカインアミドは、Ia 群の抗不整脈薬です。K+ チャネルは遮断しません。選択肢 4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
ジルチアゼムは Ca 拮抗薬です。(104-154 選択肢 4)。「Naチャネルを遮断」ではありません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 1,3 です。

参考 薬理学まとめ 代表的な抗不整脈薬

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