薬剤師国家試験 第107回 問133-135 過去問解説

 問 題     

自宅の寝室で倒れている男性が救急搬送された。簡易検査の結果をもとに、直ちに対応する解毒薬が投与された。一方、寝室にはコップの中に大量の錠剤が沈んだ飲料水が残されていた。

問133

錠剤の成分が何かを調べるため、コップの中に残された薬剤に適切な処理をしたのち、1HNMRスペクトル (CDCl3溶媒中) を測定した。得られたスペクトルをデータベースと照合したところ、図に示したチャートとシグナル及び積分値が一致した。

錠剤の成分として推定される医薬品 A の構造はどれか。1つ選べ。

ただし、図は TMS を基準 (0ppm) とし、シグナルを積分曲線と共に示したもので、×は重溶媒中に微量に含まれる CHCl3 のシグナルである。

問134

法令上、この医薬品Aが該当するのはどれか。1つ選べ。

  1. 麻薬
  2. 向精神薬
  3. 覚醒剤
  4. 指定薬物
  5. 要指導医薬品

問135

この患者に投与された解毒薬として、適切なのはどれか。1つ選べ。

  1. ネオスチグミン
  2. ナロキソン
  3. フルマゼニル
  4. ヨウ化プラリドキシム
  5. ジメルカプロール

 

 

 

 

 

正解.
問133:1
問134:2

問135:3

 解 説     

問133

ピークの分裂は非常に複雑なので、積分値に注目します。以下のように、水素の数が 1 個、2個、3個のピークと考えられます。大体 ppm が 7 付近のグループを ①、ppm が 5.5 付近のグループを ②、ppm が 4.1 付近のグループを ③、ppm が 2.6 付近のグループを ④ とナンバリングしています。

① のグループの H の数が 2+3+1+1=7個
② のグループの H の数が 1個
③ のグループの H の数が 1個
④ のグループの H の数が 3個 とわかります。

選択肢に注目すると
まず、選択肢 1 ~ 3 と 4,5 の大きな違いとして、メチル基の存在があげられます。メチル基の 3 つの H と対応するのが NMR スペクトルの ④ と考えられます。従って、正解は 1 ~ 3 です。

NMR スペクトルの ① のグループの H が、高い ppm であることから、ベンゼン環における H と対応していると考えられます。すると、ベンゼン環における H の個数は、選択肢 1 が 7個、選択肢 2,3 が 8 個です。

以上より、問 133 の正解は 1 と考えられます。

問134

問 133 選択肢の構造に共通しているのが ベンゾジアゼピン骨格であることは読み取れたのではないでしょうか。例えばブロチゾラム(レンドルミン)などを思いつけば、向精神薬という区分が選べると思います。

問 134 の正解は 2 です。

問135

ベンゾジアゼピン系に対する解毒薬なので、フルマゼニル(商品名 アネキセート)です。(106-29 選択肢 5)。

問 135 の正解は 3 です。

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