問 題
67歳女性。身長160cm。10年前に右乳がんに対し乳房切除術を施行した。術後3年で骨転移し、経年的に肝、肺にも転移した。骨転移が見つかってから、全身化学療法を実施し、現在はエリブリンによる七次治療中である。
7日前にエリブリンの5サイクル目(1サイクル:day1とday8投与、day15休薬)のday1の投与を行った。その後、倦怠感の出現、食欲の低下、歩行困難の進行が認められ、本日、入院となった。疼痛の訴えはない。
7日前と本日の体温、体重、主な検査値は下表のとおりである。
問302
本日、この患者に行う治療として、適切なのはどれか。2つ選べ。
- エリブリンの5サイクル目day8の投与
- タゾバクタム・ピペラシリン水和物の投与
- 好中球減少症に対してエポエチンの投与
- 倦怠感に対してフェンタニルの投与
- 食欲不振に対して末梢静脈栄養法又は皮下輸液の実施
問303
この患者は、がん悪液質が進行していると考えられた。この患者の病態に関する記述のうち、誤っているのはどれか。1つ選べ。
- 全身の炎症状態を伴っている。
- 複合的な代謝障害が起こっている。
- 筋肉量が減少している。
- パフォーマンス・ステータスが低下している。
- 総エネルギー消費量が増加している。
正解.
問302:2, 5
問303:5
解 説
問302
エリブリンは、海綿動物クロイソカイメンから単離された天然有機化合物ハリコンドリン B の合成誘導体です。微小管の端にある、少数の高親和性部位に主に結合し、細胞分裂阻害作用を発揮し、がん細胞にアポトーシスを引き起こすことで抗がん作用を示します。
選択肢 1 ですが
体調を考慮し、休薬が妥当と考えられます。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 は妥当です。
タゾバクタム・ピペラシリンは、β-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質製剤です。
選択肢 3 ですが
エポエチンは、エリスロポエチン製剤です。腎性貧血に使用されます。本患者への使用は妥当ではないと考えられます。選択肢 3 は誤りです。
選択肢 4 ですが
疼痛の訴えはない、とあるので、フェンタニル投与は不要と考えられます。選択肢 4 は誤りです。
選択肢 5 は妥当です。
以上より、正解は 2,5 です。
問303
がん悪液質とは「通常の栄養サポートでは完全に回復せず,進行性の機能障害に至る,骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性症候群」です。全身性の炎症がおきており、また、食欲不振が多く見られます。安静時エネルギー消費量は増加傾向にありますが、活動性の低下から、総エネルギー消費量は増加とはいえません。
以上より、正解は 5 です。
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