薬剤師国家試験 第106回 問282-283 過去問解説

 問 題     

66歳男性。排尿困難となり病院を受診したところ、ホルモン感受性の前立腺癌と診断された。主な検査値は以下のとおり。

(検査値)

ALT 38IU/L、AST 28IU/L、血清クレアチニン値 1.1mg/dL、BUN 12mg/dL、PSA値 28.0ng/mL、グリーソンスコア 9

この患者は、以下の処方による治療が計画されている。

問282

リュープリン®PRO注射用キットに関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。

  1. 本剤は乳濁性注射剤である。
  2. 本剤のマイクロカプセルは、乳酸重合体を主たる基剤としている。
  3. 投与後、マイクロカプセルが体内でゆっくりと分解することでリュープロレリン酢酸塩を徐放出する。
  4. 本剤のマイクロカプセルの平均粒子径は、約600μmである。
  5. 本剤には、分散剤としてレシチンが含まれている。

問283

この患者の治療に関する記述のうち、適切なのはどれか。2つ選べ。

  1. 吸収が一定になるよう同じ部位に注射する必要がある。
  2. 24週を超える間隔で投与すると、臨床所見が一過性に悪化するおそれがあるので、24週後に来院するよう患者に指示する。
  3. 注射部位が硬結するので、注射後はよくもむよう患者に指示する。
  4. 血管内に注射液が混入しても徐放性は保持されるので問題ない。
  5. 黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)誘導体又は合成LH-RHに対して過敏症のある場合は禁忌なので既往歴を確認する。

 

 

 

 

 

正解.
問282:2, 3
問283:2, 5

 解 説     

問282

問 283 とまとめて解説します。

問283

リュープリン PRO は、24 週間持続の徐放性製剤です。もともと、乳酸重合体を基剤としたマイクロカプセルにリュープロレリンを含有することで徐放性を示す 12 週間持続製剤がありました。主たる基材としては乳酸重合体を用いながら、マイクロカプセルの基剤を変更するなどの改良により、効果を 24 週間持続することに成功した製剤です。平均粒子径は約 30 μm です。

24 週を超える間隔で投与すると、下垂体−性腺系刺激作用により性腺ホルモン濃度が再度上昇し、臨床所見が一過性に悪化するおそれがあるので、24 週に 1 回の用法を遵守することとされています。

投与の際、静脈注射により血栓を生じる可能性があるため、皮下注射のみに使用する点や、注射部位は毎回変更し、もまないことなどが注意点です。

以上より、問 282 の正解は 2,3 です。
問 283 の正解は 2,5 です。

ちなみに、グリーソンスコアとは、前立腺がんの悪性度を示すスコアです。8~10なので、悪性度が高いとされます。

コメント