問 題
38歳女性。腰痛のため近医を受診したところ以下の薬剤を処方され、1歳0ヶ月の幼児(体重9kg)を伴って薬局を訪れた。
幼児は、1回の授乳で200mL程度の母乳を飲むことがあるとのこと。母乳による育児の継続を強く望んでいるが、薬の服用後に母乳中に薬が移行して子どもに影響することに不安を持っているとのことであった。
アセトアミノフェンの乳汁/血漿中薬物濃度比は0.91~1.4とされている。また、アセトアミノフェン錠の添付文書から薬物動態及び用法・用量に関する以下の情報を得た。
【薬物動態】
成人にアセトアミノフェン400mgを経口単回投与後の最高血漿中濃度は9.0ng/mLであり、投与12時間後には血漿中からほぼ完全に消失していた。
【用法・用量】
通常、幼児及び小児にはアセトアミノフェンとして、体重1kgあたり1回10~15mgを経口投与する。
問268
患者が指示どおりに服用した場合、乳汁200mLあたりに含まれるアセトアミノフェン量は、保育する幼児における最低用量に対し、最大で何%に達する可能性があるか。最も近い値を1つ選べ。
なお、アセトアミノフェンの血漿から乳汁への分布は速やかに平衡状態に達するものとする。
- 2.8
- 9.0
- 25
- 90
- 250
問269
薬剤師の患者への説明として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- 母乳中への薬物の移行量が多いので、処方の中止を医師に連絡する必要があります。
- 母乳中への薬物の移行量は少量ですが、授乳は中止してください。
- 母乳と粉ミルクで育児に大きな違いはないので、授乳を中止するのが無難です。
- 母乳中への薬物の移行量は少量であり、薬剤服用中でも授乳可能です。
- ロキソプロフェン錠に変更すれば、母乳中に薬物が移行しないので安全です。
正解.
問268:1
問269:4
解 説
問268
問269 と合わせて解説します。
問269
患者が指示どおり服用すると、1回量 400mg 服用です。【薬物動態】から、薬物の最高血中濃度は 9.0 μg/mL です。この濃度と仮定します。乳汁中の薬物濃度は、血漿中との濃度比が最大の 1.4 と仮定します。9.0 × 1.4 μg/mL が、乳汁中のアセトアミノフェン濃度です。
1回の授乳で 200mL 飲むので、この時胎児が摂取するのは 9.0 × 1.4 × 200 μg = 1.8 × 1.4 mg です。一方、幼児へのアセトアミノフェンの用法・用量は 9kg であれば最低用量が 10 × 9 = 90mg です。従って、1.8 × 1.4 ÷ 90 ≒ 0.028 です。2.8% とわかります。
「お子様のことをとても気にかけていらっしゃるんですね。不安な気持ち、わかります。今回処方されたお薬についてですが、薬物の移行量は、極めて少量です。同い年ぐらいの幼児に対し 今回お母様が飲まれる痛み止めが出ることはよくあり、その場合の赤ちゃんが飲む量を 100 とすると、 3/100 程度が、母乳中からお子様へと移行することが予想されます。
この程度の量であれば、薬剤服用中も気にせず授乳可能と考えられます。痛み止めをしっかりと服用し、腰痛の対処を行って、ご無理なさらずにお過ごしするのがよいと思います。少しでも不安に応えられれば嬉しいのですが、いかがでしょうか?」といったお話をして、不安の解消につながるといいな、というケースであると考えられます。
以上より、問 268 の正解は 1 です。
問 269 の正解は 4 です。
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