問 題
60 歳女性。身長 160 cm、体重 75 kg。検診にて 50 歳時に脂質異常症を、55 歳時に糖尿病を指摘され加療中である。また、昨年より eGFR が36.3 mL/min/1.73m2 まで低下したため生活指導も受けている。
外来診療において、次の薬剤が処方されている。
問260
家族歴として、父母に心筋梗塞、父に糖尿病と脳梗塞の既往があることを聴取した。血糖値は安定しているが、LDL値 200 mg/dL、HDL値 20 mg/dL、TG値 140 mg/dLのように血中脂質濃度が十分にコントロールできていない。
この患者に対する処方の修正を提案する場合、適切なのはどれか。2 つ選べ。
- エボロクマブ皮下注ペンの追加
- ペマフィブラート錠の追加
- コレスチミド錠の追加
- イコサペント酸エチル粒状カプセルの追加
- エンパグリフロジン錠の増量
問261
処方されている薬物及び前問で処方の修正を提案する薬物のうち、脂質異常症の改善に寄与する薬物の作用機序はどれか。2つ選べ。
- 肝細胞膜上の電位依存性 Ca2+ チャネルを遮断することで、血中への VLDL 分泌を抑制する。
- HMG-CoA の生合成を阻害することで、コレステロールの生合成を抑制する。
- 胆汁酸の小腸からの再吸収を抑制することで、肝細胞膜上の LDL 受容体数を減少させる。
- プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン 9 型 (PCSK9) に結合することで、LDL 受容体の分解を抑制する。
- 小腸刷子縁のコレステロールトランスポーターを阻害することで、小腸からのコレステロールの吸収を抑制する。
正解.
問260:1, 3
問261:4, 5
解 説
問260
問 261 とまとめて解説します。
問261
問 260 ですが
選択肢 1 は妥当です。
エボロクマブ(レパーサ)は、ヒト抗 PCSK9 モノクローナル抗体製剤です。LDL 受容体分解促進タンパク質である PCSK9 に高い親和性を示し、PCSK9 の LDL 受容体への結合を阻害します。この結果、LDL 受容体の分解を抑制します。(105-262263)。
選択肢 2 ですが
ペマフィブラートは、フィブラート系薬です。核内受容体である PPARα に結合することにより、肝臓での中性脂肪合成を抑制すると共にリポタンパク質リパーゼを活性化させることで、血中の中性脂肪値を低下させます。中性脂肪値は特に問題ないと考えられます。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3 は妥当です。
コレスチミドは陰イオン交換樹脂です。腸内で胆汁酸と結合し、大便と共に排泄されることにより胆汁酸の腸肝循環を妨げます。胆汁酸はコレステロールを原料にして作られるため、陰イオン交換樹脂存在下において胆汁酸がどんどん排出されると、不足した胆汁酸を補充するためにコレステロールが使われます。これにより、血中からコレステロールを取り込もうと肝細胞において LDL 受容体発現が促進されて血中コレステロールが減少します。(104-160)。
選択肢 4 ですが
イコサペント酸エチルは EPA 製剤です。様々な作用機序を介した脂質異常症改善薬です。中性脂肪値改善がより主要な効果と考えられるため、不適切ではないが、選択肢 1,3 の方がより適切と考えられます。
選択肢 5 ですが
エンパグリフロジンは、◯◯グリフロジンなので SGLT2 (sodium glucose transporter 2)阻害薬です。糖尿病治療薬であり、脂質コントロールのための提案としては不適切です。選択肢 5 は誤りです。
以上より、問 260 の正解は 1,3 です。
問 261 ですが
前問選択肢 1,3 の解説より、選択肢 4,5 が妥当です。
以上より、問 261 の正解は 4,5 です。
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