問 題
83歳男性、独居。日常生活動作はほぼ自立している。心房細動や高血圧、軽度のアルツハイマー型認知症で薬物治療を受けていた。3ヶ月前に転倒し強い腰痛と軽度不眠のために医療機関にかかり、治療が開始された。昨夜自宅居間で転倒し、頭部を強打したため救急車で搬送され、入院となった。お薬手帳から入院時の持参薬は処方1と処方2であった。
来院時の主な所見は、下肢の浮腫や多数の紫斑を認めるほか、PT-INR 2.3、血清クレアチニン 1.7mg/dL、eGFR 30.5mL/min/1.73m2であった。なお、画像解析から頭部に出血等の異常は認めていない。
問254
処方1及び処方2の薬物の副作用に関する記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。
- プレガバリンは、γ-アミノ酪酸 GABAB 受容体を刺激し、めまいや眠気を誘発する。
- リバスチグミンは、アセチルコリン受容体を遮断することで、尿失禁を起こす。
- ニトラゼパムは、GABA の作用を増強して、ふらつきや倦怠感、残眠感を生じる。
- ワルファリンは、ビタミン K が関与する血液凝固因子の生成を抑制することで、出血傾向を生じる。
- ビソプロロールは、アドレナリン α 受容体とアドレナリン β 受容体を遮断することで尿失禁を誘発する。
問255
薬剤部にお薬手帳をもとに薬剤を整理するよう医師より依頼があった。聞き取りの結果、ふらつきは 3 ヶ月前の転倒以後に自覚するようになったこと、1ヶ月ほど前より尿失禁を繰り返すこと、腰痛は既に軽快しているとの情報を得た。
医師への薬剤整理の提案として適切なのはどれか。2つ選べ。
- リバスチグミンパッチをまとめた上で減量
- ニトラゼパム錠の服用を朝食後に変更
- ビソプロロール錠を中止
- プレガバリン口腔内崩壊錠を中止
- ワルファリン錠を減量
正解.
問254:3, 4
問255:1, 4
解 説
問254
選択肢 1 ですが
プレガバリン(リリカ)は、求心性一次知覚神経の電位依存性 Ca2+ チャネルの α2δ サブユニットに結合し、神経伝達物質の遊離を抑制することで作用します。(102-156)。GABA 受容体刺激ではありません。選択肢 1 は誤りです。
選択肢 2 ですが
リバスチグミンは、商品名イクセロンパッチのことです。アセチルコリンエステラーゼ(AchE)阻害剤です。アセチルコリン受容体遮断薬ではありません。選択肢 2 は誤りです。
選択肢 3,4 は妥当です。
選択肢 5 ですが
ビソプロロールは、β1 選択的遮断薬です。(薬理学のまとめ 2-4 4))。α 受容体遮断ではありません。選択肢 5 は誤りです。
以上より、正解は 3,4 です。
問255
ふらつきについて、処方2が原因ではないかと考えられます。処方1もふまえてみると、リバスチグミンパッチは重複しています。また、プレガバリン(リリカ)の副作用として、眠気等が知られています。痛みが既に軽快していることから、プレガバリンは中止が妥当です。
以上より、正解は 1,4 です。
※薬の作用ではない、別の疾患が背景にある等の理由かもしれません。そのため、継続したアセスメントが必要です。
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