問 題
35 歳女性。身長 160 cm、体重 48 kg。学生時代より重度の花粉症のため、投薬治療を受けていた。1 年ほど前より片頭痛が徐々に強くなり、かかりつけ医を受診して以下の処方 1 で治療を受けている。
問250
処方1で片頭痛の治療及び予防の目的で処方されている薬物の作用機序として正しいのはどれか。2つ選べ。
- 5 – リポキシゲナーゼを阻害して、ロイコトリエンの合成を阻害する。
- Na+ チャネルを遮断してグルタミン酸の遊離を抑制する。
- Ca2+ チャネルを遮断して頭蓋血管を拡張する。
- セロトニン 5-HT1D 受容体を刺激して三叉神経からのカルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) の遊離を抑制する。
- シクロオキシゲナーゼ-1 (COX-1) を阻害して、プロスタグランジンの生合成を抑制する。
問251
帰宅後に発熱、倦怠感、喉の痛みを自覚し、近医を受診した。急性扁桃炎と診断され、処方 2 が処方された。
処方1との併用を考慮し、かかりつけ薬剤師が行う疑義照会として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
- モンテルカストの作用が増強するおそれがあるため、アセトアミノフェン錠を半量にする。
- 血栓形成のおそれが強くなるため、トラネキサム酸錠を半量にする。
- エレトリプタンの作用が増強するおそれがあるため、エリスロマイシン腸溶錠をアジスロマイシン錠に変更する。
- ロメリジンの作用が減弱するおそれがあるため、エリスロマイシン腸溶錠をアジスロマイシン錠に変更する。
- 肝機能が悪化するおそれがあるため、アセトアミノフェン錠をイブプロフェン錠に変更する。
正解.
問250:3, 4
問251:3
解 説
問250
問 251 とまとめて解説します。
問251
処方1についてですが
片頭痛に対する処方がエレトリプタンとロメリジンです。モンテルカストが花粉症のために出ていると考えられます。
問 250 ですが
片頭痛は、三叉神経活性化→神経終末から神経ペプチド遊離→硬膜血管拡張や神経原性炎症 といった流れと考えられています。
エレトリプタンは、セロトニン 5 – HT1B/1D 受容体を刺激する片頭痛治療薬です。脳血管平滑筋の 5-HT1B 受容体、硬膜血管周囲三叉神経終末の 5-HT1D 受容体に選択的・特異的に作用し、硬膜血管の収縮、神経終末からの神経ペプチドの放出抑制等の作用を介し、片頭痛発作を鎮めます。
ロメリジンは、脳血管選択的 Ca 拮抗薬です。血圧降下作用はほぼ示さないという特徴があります。
以上より、正解は 3,4 です。
問 251 ですが
トリプタン系服用時は、肝機能、腎機能や飲み合わせに注意が必要です。処方2にエリスロマイシンがあり、エリスロマイシンはマクロライド系なので CYP3A4 不可逆的阻害です。トリプタン系の中でもエレトリプタンは CYP 3A4 で代謝を受けるため、相互作用→血中濃度上昇に伴い作用増強のおそれがあります。
そこで、エリスロマイシン腸溶錠の処方について、疑義照会すべきであると考えられます。代替薬としては、アジスロマイシンがあげられます。アジスロマイシンは、15 員環マクロライドで、CYP や P-gp との相互作用が比較的小さいマクロライド系抗生物質です。
以上より、正解は 3 です。
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