106回薬剤師国家試験 問210-211解説

 問 題     

81歳男性。半年前に妻を亡くしてから在宅医療を受けている。また、10年前から糖尿病の治療のため、処方1の薬剤を服用している。

最近、患者宅を薬剤師が訪問したところ、近所に住む娘から低血糖症状が頻回に発現するとの情報を得た。そこで、アドヒアランスを考慮し、医師に処方1を中止して処方2への変更を提案したところ、受け入れられた。

問210

薬剤師が患者の家族に対し、処方2について説明する内容として、正しいのはどれか。1つ選べ。

  1. 低血糖症状を発現した時のために、ショ糖では効果がないのでブドウ糖を準備してください。
  2. 日曜日の朝飲み忘れた場合は、気がついた時点で1錠を飲ませて下さい。ただし、一度に2回分は飲ませないようにしてください。
  3. グレープフルーツジュースと一緒に服用すると、低血糖が発現しやすくなるので飲ませないでください。
  4. 服用期間中に納豆を食べると、血糖を低下させる効果がなくなりますので食べさせないでください。
  5. 服用すると便が黒くなりますが、心配ありません。

問211

処方2で用いられた薬物は、プロテアーゼであるジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)の基質結合部位に結合して阻害することにより血糖降下作用を示す。

この薬物は、以下の図に示したようなDPP-4の基質結合部位のアルギニン残基、グルタミン酸残基、フェニルアラニン残基の側鎖とそれぞれ相互作用する官能基をもつ。

処方2の薬物の構造はどれか。1つ選べ。ただし、グアニジノ基は水素結合相互作用におけるプロトン供与体として働く。

 

 

 

 

 

正解.
問210:2
問211:4

 解 説     

問210

選択肢 1 ですが
ショ糖では効果がないのは、αーグルコシダーゼ阻害薬服用時です。オマリグリプチンは、◯◯グリプチンなので、DPP-4選択的阻害薬です。選択肢 1 は誤りです。

選択肢 2 は妥当です。

選択肢 3,4 ですが
CYP の関与は知られていません。従って、グレープフルーツジュース(GFJ)服用を気にする必要はありません。また、納豆との相互作用も特にありません。選択肢 3,4 は誤りです。

選択肢 5 ですが
便の変色は知られていません。選択肢 5 は誤りです。

以上より、正解は 2 です。

問211

代表的な糖尿病薬治療薬の構造ですが、覚えている人はあまりいないのではないでしょうか。現実的な解き方としては、以下のような推測が一例ではないかと思います。

問題文から、3つの残基とそれぞれ相互作用する官能基を有するという点に注目します。ある程度大きく、かつ、3つの反応点がありそうな構造という観点から選択肢を検討します。すると、選択肢 1 or 4 ではないでしょうか。

選択肢 1 or 4 と絞った過程についてもう少し補足します。

選択肢 2 について
ベンゼン環で ΠーΠ相互作用するとして、カルボキシル基でもう1つで、あとはペプチド結合部分は安定だし、他は飽和炭素なので反応性が薄そうです。せいぜい反応点が2つです。

選択肢 3 ですが
ほぼ OH 基しかありません。NH の部分でもう1個としても、3種類の異なる残基側鎖と反応はしないのではないかと思われます。

選択肢 5 ですが
NH や NH2 ばかりで、3種類の異なる残基側鎖と反応はしないのではないかと思われます。

そして、選択肢 1 ですが
SO2 + 尿素 の部分構造に注目することで、SU (スルホニルウレア)薬と判断したい構造です。DPPー4阻害薬の構造ではないと判断できます。

以上より、正解は 4 です。
ちなみに、選択肢 1 からそれぞれ、グリメピリド、ナテグリニド、ボグリボース、オマリグリプチン、ブホルミンの構造です。

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