薬剤師国家試験 第106回 問175 過去問解説

 問 題     

肝代謝のみで消失する薬物について、血漿タンパク結合に飽和が認められ、投与量の増加に伴い血中タンパク非結合形分率 (fu) が増加していた。

この薬物を経口投与したとき、投与量と血中濃度時間曲線下面積 (AUC:実線) 、及び投与量と非結合形薬物の AUC (fu×AUC:点線) の関係として、適切なのはどれか。1つ選べ。

なお、肝血流速度、この薬物の吸収率及び肝固有クリアランスは投与量が増加してもいずれも一定であり、肝での消失は well-stirred model に基づくものとする。

 

 

 

 

 

正解.3

 解 説     

AUC = D/CL なので、投与量が増加すれば AUC も増加します。また、CL に変化がなければ、投与量に比例します。

薬物を 100 入れた時、蛋白結合 60、フリー40 だったとします。蛋白が飽和するとは、さらに薬物を 100 入れた時に、100 全部 フリーのまま、ということです。

血中において蛋白と結合していないフリーの薬物のみが組織、本問で言えば肝臓組織へ移行します。肝組織へ移行し、代謝されるということは、血中濃度が下がるということです。同じ時間で多くの薬物入りの血液をきれいにできる ということから、CL が大きくなったと解釈できます。従って、ある程度以上の投与量において、AUC はそれまでよりも小さくなります。実線に注目すれば、頭打ちになっているのは、選択肢 3 or 5 です。

非結合薬物に注目すると、CL に変化はありません。血中 → 肝臓組織に移行し、一定のクリアランスで薬物入りの血液がきれいになっていくのだから、投与量の増加に伴い AUC は単調に増え続けると考えられます。すなわち、点線は直線状と考えられます。

以上より、正解は 3 です。

参考 薬剤学まとめ 肝および肝固有クリアランス

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